国土交通省は、毎年10月14日に制定している「鉄道の日」にちなみ、鉄道に関する優れた取り組みを表彰する第22回「日本鉄道賞」の受賞者を発表しました。
コロナ禍乗り越えつながった250kmの鉄道
1872年(明治5年)10月14日、新橋〜横浜間に日本で最初の鉄道が開通したことを記念して定められた鉄道の日は、今年2023年で制定30周年を迎えます。鉄道に関する理解と関心を深めてもらい、鉄道の一層の発展を期待するという趣旨のもと、2002年(平成14年)に創設された表彰制度が「日本鉄道賞」です。
対象は鉄道に関する施設整備やサービスのほか芸術作品、テレビ番組など多岐にわたります。東京大学大学院の工学系研究科教授である古関隆章さんを委員長とする表彰選考委員会が応募書類を評価・ヒアリングし、議論を行ったのち、優れた取り組みを選んで表彰します。今年の鉄道賞には20件の応募があり、その中から5件の受賞者が決定しました。
最高賞である「日本鉄道大賞」に選ばれたのは、「新横浜線開業! つながる! 相鉄線・東急線~総延長約250kmにおよぶ広域鉄道ネットワークの形成~」です。2023年3月18日(土)に開業した「相鉄・東急直通線」の建設を担った独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構(JRTT)と、営業主体である相模鉄道、東急電鉄が連名で受賞しました。
受賞理由として、コロナ禍による鉄道運営の困難の中でも、着実に準備と建設作業が進められたことが上げられています。受賞した3者に加え、相互直通運転を行っている鉄道事業者の協力と尽力の成果により、広域で利便性の高い統合的な列車運行が実現したことが高く評価されました。委員からは、「私たちの都市生活の質向上に向けた明るい未来を示してくれる」と称賛の声が上がっています。
(第22回「日本鉄道賞」の大賞と特別賞を受賞した取り組み事例、過去の大賞受賞案件など詳細は下の図表を参照)
四国ローカル鉄道の「生き残り戦略」も評価
選考委員会による特別賞には、4者の取り組みが選定されました。
2011年(平成23年)7月の新潟・福島豪雨で不通となった只見線は、関係自治体が運営に携わる「上下分離方式」を採用して約11年ぶりに全線開通しました。沿線住民が一丸となっておもてなしを行い、災害前より利用者が増加するなど具体的な成果が出ています。「これからの災害復興のロールモデルになる」と、路線の活用に積極的に挑戦している「只見線利活用推進協議会」が表彰されました。
人口減少により存続が危ぶまれているローカル鉄道ですが、独自の生き残り戦略を示しているJR四国が特別賞に選定されました。徳島県の牟岐線では、本来は競合関係にあるバス会社と連携し、移動手段をシームレスにつなぎ合わせて利便性を高める「四国モデル」が確立しています。事業者間だけでなく、法の特例措置や国交省の協力など、多方面の連携が行われていることも評価のポイントです。
日本の鉄道の先進性や魅力を広く海外に紹介する取り組みも特別賞に選ばれています。東京メトロは世界の鉄道関係者を対象に、豊富な経験と知識を活かしたオンライン講座「Tokyo Metro Academy」を開講しました。各都市の持続可能な発展に貢献することが目的で、聴講者から高い評価を得ています。対面で現場視察を行う「訪日研修」も実施予定で、よりリアルな反応が期待されています。
全国の個性的な鉄道車両や路線を発信する英語番組「Japan Railway Journal」を制作したNHKにも賞が授与されます。次世代新幹線車両やリニア中央新幹線、阿佐海岸鉄道による世界初のDMVなど、日本の鉄道の魅力が多角的に取り上げられており、NHKワールドJAPANを通して世界で視聴できます。訪日客の鉄道に対する興味を深め、鉄道への親しみをを増すことに貢献したと評されています。