城端線・氷見線「あいの風とやま鉄道」に移管へ 5年後めど 新型車両導入にJR西も協力

【訂正】JR西日本からあいの風とやま鉄道への移管予定時期に誤りがありましたので訂正いたしました。
(誤)2028年頃→(正)2029年頃

富山県などが国に申請した「鉄道事業再構築実施計画」が2024年2月8日(木)に認定され、JR西日本の城端線と氷見線は2029年頃をめどにあいの風とやま鉄道に移管されることが決まりました。

氷見線・城端線などで運行しているJR西日本キハ40形気動車(たぬてつ/写真AC)
氷見線・城端線などで運行しているJR西日本キハ40形気動車(たぬてつ/写真AC)

「LRT化」は諦めるも再構築へスピード対応

人口減少やマイカーへの転移などによりローカル鉄道を取り巻く状況は年々悪化し、民間事業者任せにしていては多くの路線で維持が困難になると言われています。国は2022年10月に「地域公共交通活性化再生法」を改正し、沿線自治体を含む関係者が一丸となって地域交通ネットワークを再構築する計画を支援する体制を整えました。

JR西日本が保有・運行している城端線(高岡駅〜城端駅間:29.9km)と氷見線(高岡駅〜氷見駅間:16.5km)は、富山県西部の高岡駅を中心に南北軸を形成するローカル線です。JR発足の1987年度には輸送密度がともに4,400人キロ程度あった路線ですが、2022年度は2,100〜2,400人キロ台にまで半減し、なにか手を打たないと将来にわたり維持できない状況にまで来ています。

富山県内では、かつてJR西日本の路線だった富山港線をLRT(軽量軌道交通)に転換して富山地方鉄道に事業譲渡させ、中心市街地に直通運転するなど利便性を向上させて大幅に利用者を増やした成功事例があります。それに習って県と城端線・氷見線沿線の4市(高岡・氷見・砺波・南砺)は2020年6月に検討会を設け、両線をLRT化して新しい交通体系に変革させることをJR西日本と協議していました。

結果、費用面や工事による長期運休のデメリットを考慮してLRT化は諦め、国の法改正による支援の活用を視野に入れ2023年7月に発足した「城端線・氷見線再構築検討会」へと議論が引き継がれました。検討会は約5か月という異例のスピードで再構築計画案をまとめ上げ、2023年12月22日に国土交通大臣に申請、改正地域交通法が施行されてから初めての認定となりました。

(城端線・氷見線の周辺路線図、輸送密度の推移、鉄道事業再構築事業の実施スキームなど詳細は下の図表を参照)

【路線図で解説】城端線・氷見線の周辺路線図、輸送密度の推移、鉄道事業再構築事業の実施スキーム

ICカード対応や直通運転で利用者数25%増狙う

再構築事業の実施期間は2024年2月15日(木)から10年間で、開始からおおむね5年後をめどに、鉄道施設や土地の保有、運行を担う第一種鉄道事業者をJR西日本からあいの風とやま鉄道へと変更します。北陸新幹線開業後の城端線・氷見線はJR西日本の飛び地路線となっていますが、高岡駅から各方面への運行主体をあいの風とやま鉄道に統一することで県西部の交通ネットワーク強化を図ります。

利便性向上のための新型車両導入や交通系ICカードへの対応、増便やパターンダイヤ化に向けた施設改良は事業譲渡を待たずに実施し、JR西日本はこれに協力します。また、譲渡後は両線の直通運転を行うための高岡駅改良工事に着手します。これらの施策の効果として1日の利用者数を現在より25%多い12,000人以上まで増やし、毎年の赤字を3億円強減らす計画です。

計画によると、再構築の総事業費として約341億円を見込んでおり、県と4市が負担するほか、国に認定された「社会資本整備総合交付金」を活用する予定です。また、事業譲渡に際してJR西日本が拠出金150億円を支払うことで合意しており、一部が設備投資費に充当され、残りは譲渡後の収支を補填するための基金に積み立てられます。

富山県の新田八朗知事は「地域交通を取り巻く環境が厳しさを増す中、関係者が危機感を共有し、スピード感と強い覚悟を持って取りまとめた計画が改正法施行後第1号の計画として全国に先駆けて認定されたことは大変喜ばしく、また価値あるものと受け止めています」とコメントしています。

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