利用者減が止まらない大鰐線を28年3月で全線運行休止 代替交通に切り替え事実上の廃線に 青森の弘南鉄道

弘南鉄道は2025年10月2日(木)、利用者が減少している大鰐線について、経営環境悪化を理由に2028年4月1日から全線で運行を休止することを公表しました。

利用者数はピーク時の10分の1以下

弘前電気鉄道が1952年(昭和27年)に大鰐駅~中央弘前駅間の全線を開業し、経営権譲渡により1970年(昭和45年)から弘南鉄道の路線となりました。大鰐線の利用者数は1974年(昭和49年)度の約390万人をピークに年々減少を続け、2023年度はその10分の1を割り込む約27万人にまで落ち込んでいます。同社弘南線の利用者数はピーク時の4分の1程度で踏みとどまっており、それと比較しても大鰐線の右肩下がりはは顕著です。

その理由として地域の過疎化と少子化、モータリゼーション進展という全国各地のローカル線に共通した環境変化に加え、JR東日本の奥羽本線と並行していることや、沿線での学校の閉校や生徒定数の削減といった大鰐線特有の悪条件も挙げられます。大鰐線の維持に向け沿線の弘前市と大鰐町は2021年度以降、安全輸送や利用促進、赤字補てんのため、国や青森県の補助に含まれない費用を合わせて約4億円支援してきました。弘南鉄道は近年、沿線の協賛施設に電車で訪問すると帰りの運賃を100円に割り引く企画乗車券「わにサポ」の発売や、自転車をそのまま持ち込めるサイクルトレインの導入など利用促進に努めてきました。

脱線事故や線路トラブルで長期間不通も

しかし、2023年8月に大鰐線の大鰐駅~宿川原駅間で発生した脱線事故、同年9月に各所で見つかったレール異常という安全輸送に関わるトラブルが連続し、のべ約3か月間の長期にわたる運転見合わせを余儀なくされました。同社は株主優待乗車証の廃止や役員報酬の減額など身を切る経費削減を図ってきましたが、今後の経営環境を見据え、大鰐線の運行継続は困難と判断しました。運行休止の意向は、同社への支援を話し合う2024年11月の協議会で初めて表明され、沿線市町村長らはおおむね理解を示したとのことです。

大鰐線は事実上の廃線となることが確定し、2028年3月31日の運行をもって78年の歴史に幕を閉じます。県は2025年3月、沿線の自治体やバス会社、タクシー協会らとの会議を開き、代替となる公共交通の検討を始めました。弘南鉄道は代替交通の準備にできる限り協力するとともに、運行休止まで安全運行に努め、利用促進の取り組みも継続する方針です。

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