Osaka Metro(大阪メトロ)は、大学新キャンパスに隣接する「森之宮検車場」(大阪市城東区)の構内に中央線の新駅を設置する方針を決定し、2028年春の開業を目指して準備を進めます。
東西軸強化の起爆剤に
大阪城東部地区には現在、UR都市機構の大規模団地などが存在していますが、上記の検車場やJR西日本の森ノ宮電車区といった鉄道施設により地域分断されており、大阪城や都心方面へのアクセスが脆弱という難点があります。また、居住者人口のうち高齢化の割合が市内平均より高く、スーパーなどの生活利便施設が不足している、工場跡などの未利用地が多いといった課題も抱えています。
一方で、大阪府立大学と大阪市立大学を統合し2022年4月に開学した「大阪公立大学」は、府内各地に分散したキャンパスを集約する必要性から、早期に土地を利用できる森之宮にメインキャンパスを設置することを決めました。工事は始まっており、2025年後半に「森之宮キャンパス」として開設する予定です。
大阪府と大阪市は、大学を中心としたまちづくりについて検討を行い、国際色のある業務・商業機能、健康医療機能、多世代に対応した住居などとの交流・連携を図っていく方向性を示しています。
大阪メトロは、大阪・関西万博の会場であり、IR開業も予定されている「夢洲駅(仮称)」まで延伸する中央線の強化に取り組んでいます。夢洲と直結する「森之宮」が東の拠点として活性化することが東西軸強化の起爆剤になるとし、大阪市域を面的に広げることで大阪のさらなる発展につなげたい考えです(新駅周辺の地図、検車場の活用方法など詳細は下の図表を参照)。
万博輸送後の空きスペース活用
開発エリアについては、国際的な観光拠点である大阪城公園と隣接し、主要ターミナルである京橋にも近いことから、大阪メトロは「東の重要拠点となるポテンシャルを有している」と評価しています。一方で、「大学などの開発による需要に対してアクセス性が弱く、交通環境の整備が必要」と指摘します。同社が保有する検車場を有効活用し、敷地内に新駅を設置することでアクセスを改善し、開発エリアのポテンシャル向上を図っていきます。
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中央線は万博期間中、鉄道として会場に唯一乗り入れるメインアクセスとなることから、輸送力確保のため、開催までに計13編成の車両が増備されます。これに対応するよう、検車場内では既存の保守施設が移設・撤去され、空いたスペースに13列車分を収容できる留置線を整備する工事が行われています。増備車両の大半は万博終了後に他路線へ転用されるため、留置線は撤去され、その跡地に新駅が設置される計画です。また、検車場内の側線を森ノ宮駅から分岐する営業線として活用できるよう、線路や信号の設備が高度化されます。
発表されたイメージパースには、大きな球体が浮かび上がってくるようなデザインの駅舎が描かれています。大阪城東部地区のまちづくりのコンセプトに合わせ、「インテリジェンス(知)」「イノベーション(革新)」「インキュベーション(新規事業等のふ化)」の要素を表現したとのことです。西の拠点・夢洲駅と対峙する唯一無二のデザインを目指すとしており、開放的な駅構内は、多様な人が集い、交流する国際色ある場にしていく方針です。
新駅は、キャンパス周辺ゾーンで始まる民間開発のオープン時期に間に合うよう、2028年春の開業が目標とされています。今後は駅設置の事業化に向け、関係者と継続した協議を行っていくとともに、建設や運転についての計画、駅名などの具体的な検討を始めます。