JR東海は、ハイブリッド方式の新形式車両「HC35形」を開発し、関西本線・伊勢鉄道線・紀勢本線・参宮線を直通運転する快速「みえ」や高山本線・太多線の普通列車に導入します。
車齢30年のキハ75形からバトンタッチ
製造から約30年経ち更新期を迎えるキハ75形気動車の代替車両と位置付けられ、在来線普通列車へのハイブリッド車の投入は同社として初めてです。特急「ひだ」「南紀」用に2022年7月にデビューした「HC85系」と同じく、エンジンで発電した電力と蓄電池に貯めた電力を組み合わせてモーターを回転させる走行方式です。環境負荷の低減が大きな特長で、キハ75形と比べて約35%の燃費向上を実現し、排出ガスからCO2を約30%、NOxを約40%削減します。
ハイブリッド化により気動車特有の回転部品である推進軸が不要となり安全性が向上し、ギアチェンジの解消によって乗り心地も良くなります。車両機器の稼働状態や故障などを遠隔で常時監視できる状態監視システム、重要溶接部を少なくした台車構造など、すでに使用実績のある技術を活用して信頼性を高めます。車内には防犯カメラや車椅子対応トイレが設置され、冷房能力を向上させた空調設備には混雑状況に応じてAIが自動的に温度補正する機能が付いています。
デザインに「速さ」要素をプラス
外観デザインは通勤型電車315系と共通の親近感ある形状と色彩をベースにしつつ、斜めに立ち上がるオレンジ帯で快速「みえ」の速達性を表現しています。2028年度~2029年度にかけ2両編成19本を製造し、名古屋駅~鳥羽駅間で主に快速「みえ」、岐阜駅~下呂駅間と美濃太田駅~多治見駅間で普通列車として運用する計画です。
キハ75形の座席は全車両が端部のみ固定式の転換クロスシートで揃えられていますが、HC35形は線区や列車の特徴に合わせた座席配置となります。快速「みえ」などで運用する車両はオール転換クロスシートとロングシートが1両ずつの構成で、指定席と自由席の車両間にサービス差が設けられます。一方、高山本線・太多線向け編成は2両ともロングシートで、315系に続き、新造する普通車両はロングシートを主体とする方針を踏襲します。







