箱根登山鉄道が11%の運賃値上げ 25年ぶり 利用客数ピークの4割 台風被害復旧も重しに

箱根登山鉄道は、鉄道線の運賃改定を国土交通省関東運輸局に申請し、2022年10月1日(土)から実施する予定と発表しました。

箱根登山鉄道3000形電車「アレグラ号」(左)と2000形電車「サン・モリッツ号」の併結編成(写真魚/写真AC)
箱根登山鉄道3000形電車「アレグラ号」(左)と2000形電車「サン・モリッツ号」の併結編成(写真魚/写真AC)

対象は小田原駅〜強羅駅間の鉄道線(箱根登山電車)の普通運賃および通勤・通学定期運賃で、平均改定率は10.9%です。営業キロ3kmまでの初乗りは140円から160円となるなど、普通運賃は現行から20〜90円値上げされます(運賃の改定前後比較は下表を参照)。なお、特急料金・座席料金および鋼索線(箱根登山ケーブル)の運賃に変更はありません。

同社が鉄道線の運賃を改定するのは1997年(平成9年)4月以来25年ぶり(消費税率引き上げに伴う改定を除く)で、利用者の負担に配慮しつつもコストに見合った適切な運賃水準に見直したいとのことです。鉄道線の乗客数は1990年度の1032万人をピークに徐々に減少傾向をたどっています。一時は訪日外国人旅行者の増加による回復があったものの、2019年の東日本台風災害による一部運休なども影響し、2020年度はピーク時の4割となる413万人まで大幅に減少しています。

【図表で解説】箱根登山鉄道 運賃改定を申請

これまで同社は、老朽化したトンネルなどの設備改修、新型車両3000形「アレグラ号」の導入、交通系ICカード「PASMO」への対応など、輸送の安全確保や利便性向上に努めてきたとしています。しかしながら、東日本台風に伴う災害復旧により、2020年度は被災前の運輸収入を上回る規模の設備投資を余儀なくされ、減価償却費の増加や設備の維持管理コストの大幅な上昇が発生しています。

安全な輸送サービスを維持するためには今後も適切な設備投資が必要となり、費用削減には自ずと限界があるとし、現行の運賃水準のままでは中長期的な事業運営は極めて困難との認識を示しています。