新幹線の喫煙ルームをすべて廃止 健康志向に対応 “車窓を眺めながら一服”できる路線は?

受動喫煙防止対策を進めるJR東海・西日本・九州の3社は、東海道・山陽・九州新幹線の車内に設置されている「喫煙ルーム」について、2024年春をもってすべて廃止すると明らかにしました。

2024年春をもって廃止される新幹線車内の喫煙ルームのイメージ(BANANA18/写真AC)
2024年春をもって廃止される新幹線車内の喫煙ルームのイメージ(BANANA18/写真AC)

喫煙ルームの“跡地”はどう活用?

改正された健康増進法が2020年4月から全面施行され、鉄道は多くの人が利用する施設であることから屋内での原則禁煙が義務付けられました。ただし、受動喫煙が防げる専用の喫煙ルームを屋内や列車内に設けることは法律で認められています。

東海道・山陽新幹線で運行している16両編成の「N700S」「N700系」では現在、すべての編成で3号車と15号車、グリーン車の10号車のデッキ部に喫煙ルームがあります。また、山陽・九州新幹線の8両編成「N700系」にも、3号車と7号車に喫煙ルームが設置されています。これらすべての新幹線車両の喫煙ルームは、2024年春をもって利用できなくなります。

かつては座席で喫煙できる車両が設けられていた東海道・山陽新幹線ですが、喫煙ルームを備える代わりに全席禁煙としたN700系がデビューして以降、現在の形態が続いています。厚生労働省による2019年の調査によると、成人男性の喫煙率は27.1%、女性は7.6%で、N700系が登場した2007年(平成19年、男性39.4%、女性11.0%)と比べると大きく減少しています。

喫煙ルームの廃止にあたって各社は、急速な高齢化の進展により健康の重要度が増しているという、本来の法律の趣旨に則った対応として理解を得たい考えです。喫煙率の低下に加え、健康増進志向が高まっている社会全体のニーズも背中を押した格好です。車内に喫煙ルームが設置されていない東北・北海道・上越・北陸新幹線なども含め、国内の新幹線車内は来春から全面禁煙で統一されます。

廃止後の喫煙ルームは2024年春から順次、非常用飲料水の配備場所として活用されます。災害など緊急時の対応力強化が目的で、駅以外の場所で長時間停車せざるを得ない状況になった場合でも迅速に配布できるようになるとしています。

(東海道・山陽・九州新幹線の車内喫煙ルームの場所、廃止される駅の喫煙コーナーなど詳細は下の図表を参照)

【図表で解説】東海道・山陽・九州新幹線の車内喫煙ルームの場所、廃止される駅の喫煙コーナー

「愛煙家にやさしい」あの特急列車はどうなる?

新幹線以外のタバコが吸える列車という観点で触れておきたいのは、近畿日本鉄道が運行している有料の特急列車、いわゆる「近鉄特急」です。同社が特急の座席での全面禁煙化に踏み切ったのは、改正健康増進法が適用される直前の2020年2月と、つい最近の出来事です。

これに先がけ、既存のほとんどの特急車両に喫煙室を設置する工事が行われており、同年に運行を開始した新型車両「ひのとり」を含めて移動中の喫煙を可能としています。せっかく用意した喫煙室を本格稼働させてからわずか3年余しか経っていないこともあり、「愛煙家にやさしい」とも評される近鉄特急が全面禁煙に切り替えるのはもう少し先の話になると思われます。

なお、JR西日本は、山陽新幹線の一部の駅にある「喫煙コーナー」についても2024年春で廃止すると発表しました。灰皿のみを設置した床や壁などで区画していない喫煙場所を指しており、計8駅(新倉敷駅、新尾道駅、三原駅、東広島駅、新岩国駅、徳山駅、厚狭駅、新下関駅)が対象です。主要駅のホーム上などにある区画された「喫煙ルーム」は、今回の廃止の対象になっていません。

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