大井川鐵道に初の「冷房付き客車」SL列車に順次投入へ JR西日本が譲渡する急行形12系は“廃車予定”だった

JR西日本は、国鉄時代に製造された急行形客車「12系」5両について、2025年7月18日(金)付けで大井川鐵道に動態車両として譲渡しました。

国鉄最後の急行形客車

12系客車は、1970年(昭和45年)に大阪で開催された日本万国博覧会の来場者輸送を念頭に、主に臨時列車や団体専用列車として運用する目的で開発されました。冷房装置や空気ばね台車、自動開閉可能な折り戸、電動式行先表示器など、電車や気動車で実績のある機器や装置を積極的に採用して近代化を図った「国鉄最後の急行形客車」です。

国鉄末期まで約600両が製造され、お座敷列車や欧風客車といったジョイフルトレインに改造したものも含め、バラエティに富んだ編成が北海道を除く全国で活躍しました。しかし、老朽化の進行に加え、機関車がけん引する客車列車の減少という環境の変化も影響して廃車や地方私鉄への譲渡が進み、JRグループではJR東日本とJR西日本に合わせて18両が在籍するのみとなっていました。

旧型客車ばかりの大井川鐵道に「新車」

JR西日本が保有していた5両の12系(スハフ12-129、オハ12-346、オハ12-345、オハ12-341、スハフ12-155)は1978年(昭和53年)に製造され、宮原客車区(大阪市淀川区、現: 網干総合車両所宮原支所)に配置されました。オリジナルの青い車体を保ち、臨時・団体列車のほか、2019年まで運行された蒸気機関車けん引のイベント列車「SL北びわこ号」の客車としても活躍しました。一部車両は廃車が計画され、2024年夏には京都鉄道博物館(京都市下京区)で「さよなら展示」も実施されましたが、状況は一転し、新たな活躍に向けて大阪から静岡へと旅立ちました。

SL列車をはじめとする観光列車に注力する大井川鐵道ですが、所有する客車はすべて旧型で、冷房を備え、経年が比較的浅い12系は魅力的な「新車」と言えます。大井川鐵道の親会社で、各地で事業再生に取り組むエクリプス日高(北海道新ひだか町)の資金援助により実現した譲受で、2025年11月頃をめどに観光列車に導入できるよう整備が実施されます。大井川鐵道の鳥塚亮社長は「観光列車の魅力向上に取り組んでおり、今回の導入により、より多くのお客様に『昭和の国鉄体験』をお楽しみいただけることを大変嬉しく思っております」とコメントしています。

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