JR東が会社発足後「初の運賃改定」で東京圏の割安設定を廃止 私鉄競合の特定区間も大半廃止で大幅値上げも

JR東日本は、国に申請していた運賃の上限変更が認可されたことを受け、1987年(昭和62年)の会社発足以来、消費増税によるものを除いて初めてとなる運賃改定を2026年3月に実施します。

「電車特定区間」「山手線内」を廃止

約40年にわたり運賃水準を維持してきた同社ですが、人口減や新しい生活様式による鉄道利用の減少、エネルギー価格や物価高騰、人材確保に向けた待遇改善など、今後も厳しい経営環境が続くと見込んでいます。安全維持やサービス向上のための投資、激甚化する自然災害への対応などに必要な資金を確保する必要があり、経営努力を前提として運賃改定を行うと理由を説明しています。改定率は7.1%(普通運賃7.8%、通勤定期12.0%、通学定期4.9%)で、運賃に加算されていた鉄道駅バリアフリー料金は廃止されます。

今回、首都圏に設定している他のエリアよりも安い「電車特定区間」「山手線内」の運賃区分を廃止し、「幹線」の区分に統合します。電特区間・山手線内が設定されたのは値上げが続いた国鉄時代で、もともとは私鉄や地下鉄との競争力を持たせるための運賃抑制策でしたが、現在は運賃格差が縮小または逆転しています。区分統合により特に首都圏の値上げ幅が大きくなりますが、JR東日本は今後の設備投資の約7割を首都圏で実施する計画で、エリア境界による差をなくして運賃体系をわかりやすくし、不足する資金を首都圏での増収額で賄いながら継続的な利便性向上を図る考えです。

国鉄時代から40年…私鉄との競合は過去の話?

初乗り運賃は1円単位のIC乗車券の場合、幹線・地方交通線は現行の147円から155円に、電特区間・山手線内は現行の146円(鉄道駅バリアフリー料金10円を含む)から幹線と同額の155円になります。通勤定期は6か月定期の割引率を見直す一方、朝のピーク時間を除いて利用できる「オフピーク定期券」は通常の通勤定期の約15%割引を継続するとともに、対象エリアを拡大します。家計負担を考慮して幹線・地方交通線の通学定期運賃は据え置かれますが、電特区間・山手線内については区分統合により幹線と同額に値上げとなります。

現行の運賃制度にはもう一つ、発着駅を絞り込んだ低廉な「特定区間(東京地区)」が国鉄時代から設定されていますが、路線形態の変化により競合関係がなくなった区間が多いことから、「東京駅~西船橋駅間」「新宿駅~八王子駅間」「渋谷駅~横浜駅間」など一部区間を除いて廃止されます。特定区間の一つである「品川駅~久里浜駅間」の現行運賃(IC)は945円ですが、改定後は特定区間ではなくなるため幹線運賃が適用され、現在より276円値上げの1,221円となります。そのほか、現在は運賃計算上、東海道新幹線と東海道線を同一の線路とみなしている東京駅~熱海駅間については、運賃差が生じることから、改定後は異なる線路として運賃計算が行われます。

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