しなの鉄道 存続かけたダイヤ改正で最大24%減便 最終列車繰り上げ 最高速度引き下げも

しなの鉄道は2023年3月18日(土)にダイヤ改正を実施し、しなの鉄道線・北しなの線の全線にわたって運転本数を削減するほか、最終列車の時刻繰り上げなどにより経営合理化を図ります。

しなの鉄道SR1系電車(カムラン/写真AC)
しなの鉄道SR1系電車(カムラン/写真AC)

上田〜長野間は40分間隔にパターン化

新型コロナウイルス感染症の拡大により同社の運輸収入は激減し、2020年度は4億円を超える赤字となりました。2021年度に入っても、定期外の利用者数がコロナ前の5割強程度にとどまるなど回復は遅く、国や沿線自治体からの補助金支援を受けてもなお約4千万円の最終赤字を計上しています。

事業存続が危ぶまれるほどの厳しい経営状況を乗り越えるため、同社は「事業見直しプロジェクトチーム」を設置し、沿線市町との情報共有や意見交換を重ねました。これを踏まえて同社は2021年11月に経営改善策をまとめ、すべての取り組みを行うことで約16億円の経費を削減してコロナの影響を乗り切り、2025年度からの黒字転換を目指します。

今回のダイヤ改正はこの経営改善策に基づく内容で、日中から深夜時間帯にかけて運転本数を見直すほか、最終列車の繰り上げなどにより運行経費の削減を図ります。1日の運転本数は各区間で現行ダイヤと比較して5〜12本減少し、減便率は区間により6〜24%となります。しなの鉄道線の軽井沢駅〜小諸駅間で2010年から実施されている増便実証運行についても、1日あたりの対象本数が14本から8本へと削減されます。

減便による利便性低下を防ぐため、しなの鉄道線の上田駅〜長野駅間では日中時間帯にパターンダイヤが導入されます。これまでは運転間隔が15〜50分とばらつきがありましたが、改正後はおおむね40分間隔となり、各駅の発車時刻がわかりやすくなります。

長野駅を発車する最終列車は、しなの鉄道線・北しなの線の各方面へおおむね15〜20分程度の繰り上げとなります。もっとも繰り上げ幅が大きいのは北しなの線上り列車で、妙高原駅発・長野駅行の最終列車は40分繰り上げの22:06発に変更となります。北陸新幹線や篠ノ井線からの最終列車への乗り継ぎについても変更となるため、利用者には事前確認するよう呼びかけられています(ダイヤ改正後の区間別の運転本数、最終列車の発車時刻、上田駅時刻表など詳細は下の図表を参照)。

【時刻表で解説】ダイヤ改正後の区間別の運転本数、最終列車の発車時刻、上田駅時刻表

最高速度引き下げで所要時間増

新型の「SR1系」クロスシート車両を使用する有料の特別快速列車についても、ダイヤが見直されます。

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平日朝の通勤時間帯にしなの鉄道線で運転されている長野駅行の特別快速「しなのサンライズ号」は、小諸駅〜上田駅間の各駅に停車するようになります。これは、近い時間帯に運転されている普通列車の運転区間が短縮され、始発駅が小諸駅から上田駅に変わることを補うためです。なお、改正後の「しなのサンライズ号」は有料扱い区間が上田駅からとなり、小諸駅〜上田駅間に限り列車指定券を購入しなくても乗車することができます。

土休日の朝と夕方に各1往復運転されている特別快速「軽井沢リゾート号」は1日1往復に統合され、県内の広域観光に利用しやすい時間帯の運転となります。妙高高原駅行の下り「軽井沢リゾート1号」は軽井沢駅9:36発と現行からほぼ変わりませんが、軽井沢駅行の上り「同2号」は妙高高原駅12:00発となり、現行より約4時間早い設定に改められます。

なお、現行ダイヤでしなの鉄道線に2往復設定されている無料の快速列車については、改正後は各駅停車に置き換えられます。また、レールなど線路設備の長寿命化を図ることを目的に、全線の最高速度が85km/hに引き下げられ、列車によっては所要時間が2〜3分程度増加します。

ダイヤ改正以外の事業見直し策として、しなの鉄道は無人駅を順次拡大しています。ダイヤ改正日の2023年3月18日(土)から千曲駅が終日無人化されるほか、戸倉駅の駅業務は4月1日(土)から千曲市へ委託されます。

また、JR東日本およびえちごトキめき鉄道にまたがる特定区間に設定されている「乗継割引制度」は、2023年4月1日(土)に廃止されます。これは、新幹線開業に伴う在来線の経営分離により、初乗り運賃の加算で運賃が急激に上昇することを緩和するために運賃を割り引く制度です。この廃止により、区間によって普通運賃が40円または80円の値上げとなります。