青森県中南地域に路線網を持つ弘南鉄道は、線路設備に不具合が見つかったとして2023年9月25日(月)正午から弘南線、大鰐線の全線で運転を見合わせ、現在はバス代行輸送を行っています。
全線運転再開は10月中〜下旬か
大鰐線では8月6日(日)、中央弘前駅行列車が大鰐駅を出発して宿川原駅に向かう途中、2両目車両の前方にある台車が脱線する事故が発生しました。大鰐線は全線で運転を見合わせ、8月23日(水)の運転再開までの間、2週間以上かけて現場の復旧作業と線路設備の点検、補修作業が行われました。
この事故については、国土交通省の運輸安全委員会による調査が継続中ですが、脱線は右カーブの途中で発生しており、線路の摩耗による異常が原因との見方が強まっています。この事故を受けた安全管理強化の一環で、弘南鉄道が外部機関に調査を依頼したところ、線路側面の摩耗を測定する方法に誤りがあったことが判明し、今回の全面運休を決断したようです。
9月27日(水)に行われた弘南鉄道の記者会見を伝える東奥日報の報道によると、同社の測定基準では、車輪との摩耗により線路が変形することが考慮されていなかったそうです。正しい方法で再点検したところ、合わせて6か所の線路で基準値を超える摩耗が見つかったとのことです。
内訳は、弘南線が館田駅〜平賀駅間など3か所、大鰐線は弘高下駅〜中央弘前駅間など3箇所で、いずれもカーブ区間に敷かれた線路です。線路の交換などの補修にすでに取り掛かっており、作業の進捗に合わせ、1週間から10日程度で一部区間での運転を再開することも検討しているとのことです。全線での運転再開時期は10月中旬から下旬頃になるとの見通しも明らかにしています。
(弘南鉄道弘南線・大鰐線の路線図、8月の脱線と今回の線路不具合が確認された箇所など詳細は下の図表を参照)
不通から1週間でようやく代行バス
急きょの事態により代行輸送の手配が間に合わず、関係各所との調整を急いでいた弘南鉄道ですが、運転取り止めから1週間経過した10月2日(月)からようやく代行バスの運転が始まりました。
代行バスの運転区間は列車と同じで、弘南バス(本社:青森県弘前市)の既存バス停が主に使用されるほか、一部の駅では臨時の乗降場が設置されます。代行バスの1日あたりの運転本数は、弘南線が上下各14本、大鰐線が上下各10本(ほかに津軽大沢駅発・大鰐駅行の区間便1本)です。
通常の列車と比べておおむね6割程度の本数に限られ、各始発駅を19時台に出発する便が最終となるので注意が必要です。加えて、バスの乗車人数には制限があるため、混乱を避けるために各自で乗車時刻の変更や調整を行うよう弘南鉄道は協力を呼びかけています。
弘南鉄道は、2019年(平成31年)にも大鰐線の中央弘前駅〜弘高下駅間で、列車がカーブを通過中に線路の軌間が大きく拡大したことを原因とする脱線事故を起こしています。1927年(昭和2年)に開業してまもなく100周年を迎える歴史あるローカル鉄道ですが、設備の健全性や維持管理方法など、安全運行に疑念を持たれる事象が相次ぎ、厳しい局面に立たされています。