タイ国有鉄道が所有する新しい通勤電車路線「SRTレッドライン」の試験運行が2021年8月2日(月)に開始しました。
バンコク郊外への既存の国鉄(SRT)路線は、老朽化した客車列車や気動車による輸送が行われており、運転本数は少なく、遅延も日常的に発生していました。また、都心部の幹線道路を平面交差で横切るため、慢性的な交通渋滞の元凶ともなっています。このような旧態依然な輸送サービスを解決し、近代的な通勤路線に進化させるため、「都市鉄道マスタープラン」に沿って建設されたのが「ダークレッドライン(สายสีแดงเข้ม)」「ライトレッドライン(สายสีแดงอ่อน)」の2つの電化路線です(路線図は下図を参照)。SRT関連会社の「SRTエレクトリファイドトレイン」が運営を担当します。
両線のターミナルとなるのは、バンスー・ジャンクション駅の東側に新たに建設された「バンスー中央駅(กลางบางซื่อ)」です。バンコク都心へは地下鉄路線のMRTブルーラインに乗り換えてアクセスします。
ダークレッドラインは、SRT北本線に沿ってほとんどの区間が高架で建設された26kmの路線で、バンコク北郊外の通勤輸送を担います。10駅が設けられ、全線を約25分で結びます。日本政府からタイ政府へ供与される円借款を利用して建設されました。
途中の「ドンムアン駅(ดอนเมือง)」は、北本線のドンムアン駅からは離れています。ドンムアン空港の国内線専用第2ターミナルまでスカイウォーク(歩道橋)で接続していますが、国際線の第1ターミナルまでは距離があるので注意が必要です。将来的には長距離列車の線路が移設され、ダークレッドラインと同じ駅内で上下移動により乗り換えができるようになる予定です。パトゥムターニー県の中心都市にある終点の「ランシット駅(รังสิต)」は、アユタヤ方面へと伸びる北本線のホームと一体化した設計になっており、ダークレッドラインと相互に乗り換えができます。
一方のライトレッドラインは、SRT南本線沿いに進む西郊外方面への通勤路線で、15kmを約15分で結びます。こちらはタイ政府の自己資金で建設されました。
途中の「バーンソーン駅(บางซ่อน)」でMRTパープルラインに接続しています。終点の「タリンチャン駅(ตลิ่งชัน)」は、南本線のノーンプラドゥック方面およびトンブリー方面との分岐駅です。開業時は全4駅ですが、計画ではさらに2つの途中駅が設けられる予定です。
詳しい路線図はスマートフォンアプリ「乗換路線図」で見ることができます。
運行時間は当分の間、始発列車は6:00、最終列車は19:30に出発する短縮営業となります。運転頻度は朝夕ラッシュ時(7:00〜9:00および17:00〜19:30)は15分間隔、その他の時間帯は30分間隔です。試験運行は10月31日(日)まで行われ、この期間中の乗車は無料です。11月以降は乗車距離に応じ12〜42バーツの運賃が設定されます。
車両はすべて、日本の日立製作所笠戸事業所でレッドラインのために製造された2000系電車で、4両または6両編成により運行されます。タイで日本製の電車車両が導入されるのは、2016年に開通したMRTパープルラインに続いて2例目です。