通勤通学時間帯における鉄道の混雑状況を把握するため毎年行っている調査結果を国土交通省が公表し、三大都市圏とも平均混雑率が昨年度に比べて増加していることがわかりました。
ホテルルートイン東京池袋
コロナ禍の激減から徐々に回復
調査は2024年10月から11月の乗車人員データをもとに最も混雑する区間のピーク1時間を対象に計算されており、そのうち主要な東京圏31区間、大阪圏20区間、名古屋圏8区間の平均混雑率については、過去と比較できるよう継続的に統計がとられています。2024年の平均混雑率は東京圏が139%で昨年度調査より3ポイント増加したのをはじめ、大阪圏(116%、前年比+1ポイント)、名古屋圏(126%、同+3ポイント)でも上昇という結果でした。ちなみに、鉄道の混雑率100%とは車両定員ちょうどの乗客が乗っている状態で、座席に座れる、もしくは座席前のつり革やドア付近の柱につかまることができる混雑度合いを指します。
最混雑時間帯の輸送人員をコロナ禍以前と比較すると、人流抑制やテレワークの影響を大きく受けた2020年、東京圏では前年比65%まで激減しました。以後は回復傾向で、2024年は2019年の81%に達していますが、それでもコロナ前より2割程度少ない水準です。平均160%以上の混雑率で推移していたコロナ前と比べると楽に乗車できるレベルにはなりましたが、混雑率は年々上昇しており、減便などで輸送力を調整していた鉄道事業者は見直しを迫られる可能性があります。なお、コロナ禍の利用減少度合いが東京圏と比べて緩やかであった大阪圏と名古屋圏では、2024年の輸送人員が2019年の9割前後まで回復しています。
JR東日本8区間で混雑率150%超
東京圏で最も混雑している路線と区間は、地下鉄では東京メトロ日比谷線の三ノ輪駅→入谷駅間、郊外路線ではJR東日本埼京線の板橋駅→池袋駅間で、朝ラッシュピーク時の混雑率はいずれも163%です。また、中央快速線の中野駅→新宿駅間(161%)、京浜東北線の川口駅→赤羽駅間(156%)など、JR東日本では8つの区間で150%を超える混雑が発生しています。「ドア付近の人が多くなるが肩が触れ合わない程度」が混雑率150%の目安ですが、それ以上になると圧迫感が出てきて乗車が苦痛になるレベルと言えます。
大阪圏では、Osaka Metro(大阪メトロ)御堂筋線の梅田駅→淀屋橋駅間(139%)、阪急神戸本線の神崎川駅→十三駅間(141%)など、毎年おなじみの線区が混雑率上位を占めています。阪急電鉄は、10両編成で運転してきた神戸線の通勤特急を8両編成に短縮するダイヤ改正を2025年2月に実施しており、来年度の調査にどう影響するのかが注目されます。名古屋圏では、名古屋市交通局(市営地下鉄)東山線の名古屋駅→伏見駅間(135%)、名古屋鉄道(名鉄)名古屋本線の神宮前駅→金山駅間(140%)などが混雑しており、JR東海中央本線の新守山駅→大曽根駅間(129%)のように、コロナ前より混雑が悪化(2019年は120%)している線区も出てきています。