「蒲蒲線」実現へ 都・大田区 費用負担で合意 東急・京急蒲田駅を結び空港アクセス向上

東京都と大田区は、計画中の鉄道路線「新空港線(蒲蒲線)」の第一期区間である矢口渡駅〜京急蒲田駅間の整備について、費用負担割合など事業化に向けた基本事項について合意しました。

東急多摩川線矢口渡駅〜蒲田駅間を走行する東急1000系電車(Katsumi/TOKYO STUDIO)
東急多摩川線矢口渡駅〜蒲田駅間を走行する東急1000系電車(Katsumi/TOKYO STUDIO)

東急多摩川線を京急蒲田まで延伸

新空港線は、東急多摩川線を矢口渡駅付近から地下化し、地下に新たに設ける東急蒲田駅と京急蒲田駅を通り、大鳥居駅の手前で京急空港線に乗り入れる計画路線です。2016年に開かれた国の交通政策審議会では、全体計画のうち矢口渡駅〜京急蒲田駅間の事業計画については検討が進んでおり、費用負担のあり方など事業化に向けた合意を形成すべきであるとの答申(第198号)が示されました。

これを受け、東急多摩川線を延伸して京急蒲田駅まで先行して接続させ、蒲田駅と京急蒲田駅の間(約800m)の鉄道網分断を解消する事業が「一期整備」と位置づけられました。京急空港線とは京急蒲田駅で乗り換えるかたちとなりますが、他路線との相互直通運転を通じて渋谷・新宿・池袋をはじめ、東京都北西部、埼玉県南西部からの羽田空港アクセスの利便性向上が図られます。この事業案についての東京都と大田区による協議の場が設けられ、蒲田周辺のまちづくりとの一体整備により地域活性化と乗換円滑化を実現しつつ、適切な事業費となるよう工事手法の見直しなどが検証されました。

2022年6月3日(金)に行われた第5回協議の結果、総事業費は約1,360億円と算出され、新空港線の利用者のうち航空利用客は約3割、その他の旅客が約7割であるとの需要予測がまとまりました。都は空港アクセスに関する旅客分を、区は空港を除く大田区発着に関する旅客分をそれぞれ負担するという考え方に基づき、費用の負担割合を都3割、区7割とすることで双方が合意しました(路線図、整備イメージ図、都と区の合意内容は下の図表を参照)。

【路線図で解説】東京都と大田区 「新空港線」一期整備事業の基本事項について合意

京急蒲田から先は課題あり

また、都市鉄道ネットワークの機能を高度化する計画として国が認定すると、地方自治体の整備費負担が1/3に軽減される「都市鉄道等利便増進事業」の枠組みが活用されます。この補助制度を受けるため、大田区などが出資する公的第三セクターが施設の整備主体となり、列車を運行する営業主体(東急電鉄を想定)から施設使用料の支払いを受ける「上下分離方式」が採用されます。

区の財政負担を低減したい大田区は今後、第三セクターとともに整備費の圧縮に努めるほか、新空港線の整備を「都市計画交付金」の対象事業とするよう都区で調整を行うとしています。また、整備資金として活用できるようこれまで累計で約80億円の基金を積み立てており、2022年度も約10億円の積立予算を計上しているとのことです。

なお、新空港線「二期整備」の京急蒲田駅〜大鳥居駅間については、軌間(線路の幅)が異なる路線間の接続方法に課題があるため、さらなる検討を行う必要があると国の答申には記されています。都と区は引き続き、実現に向けて関係者の協議・調整を行っていくとしています。