全線復旧のシンボル! 南阿蘇鉄道に新型車両 デザイン一新 JR直通可能な「MT-4000形」

南阿蘇鉄道は、2023年夏に予定している全線開通を前に、多言語による案内やバリアフリーに対応した新型車両「MT-4000形」2両を導入しました。

南阿蘇鉄道に導入された新型車両MT-4000形気動車(画像提供: 南阿蘇鉄道)
南阿蘇鉄道に導入された新型車両MT-4000形気動車(画像提供: 南阿蘇鉄道)

インバウンド受け入れ見据え

地元の足としてだけでなく、トロッコ列車「ゆうすげ号」などで観光面にも注力していた南阿蘇鉄道ですが、2016年(平成28年)4月14日に発生した熊本地震の影響で一時は全線が不通となりました。線路には大量の土砂が流入し、トンネルや鉄橋も甚大な損傷を受けたことにより、全線17.7kmのうち、立野駅〜中松駅間の10.5kmで現在も運転できない状況が続いています。

全国から復興義援金や「枕木オーナー」を募り、運転再開を望むファンからの多くの支援が集まったことを受け、全線復旧に向けた工事が2018年(平成30年)3月に始まりました。2023年夏の全線運転再開を目指し、被災箇所の施設改修工事が大詰めを迎えています。

全線開通後は特に外国人観光客の増加が見込まれることから、受け入れ環境の整備を目的に新型車両の投入が決まりました。MT-4000形は、新潟トランシス(本社:新潟県聖籠町)が製造した両運転台を持つ一般型気動車で、2022年11月下旬に南阿蘇鉄道に納車されました。南阿蘇鉄道の新車導入は、1998年(平成10年)のMT-3010(MT-3000形)以来、25年ぶりです。

従来車両からイメージを一新した外装デザインとなっており、白色をベースとした車体と、前面から側面へと流れるようなラインが印象的です。青ラインは、線路に沿って流れる白川や、白川水源をはじめとする湧水地の清らかな水を象徴しています。緑ラインは車窓から望む阿蘇五岳をイメージしており、光と影のコントラストが色合いの異なる2本の線に表現されています。

また、車体前面と側面に配される「n」のロゴは、南阿蘇鉄道の愛称「南鉄(なんてつ)」の頭文字で、同時に阿蘇五岳とそれを囲う外輪山も表現しているとのことです。さらに、立野駅から高森駅までの10駅が熊本地震から復興しつながったことを象徴する、数珠つなぎになった10個の小さな楕円形も描かれています(MT-4000形の外装・内装デザイン、ロゴマークなど詳細は下の図表を参照)。

【図表で解説】南阿蘇鉄道 新型気動車「MT-4000形」を導入

豊肥本線 肥後大津駅まで乗り入れ予定

車内の座席はすべてロングシートで、視線の正面に阿蘇の雄大な風景が望めることを考慮し、座席や床敷材の色は明度が抑えられています。側壁や天井には開放感のある明るい木目調が取り入れられ、客室全体でシンプルな調和が図られています。

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サービス面では、冷暖房効果を高めるためドアを半自動対応としたほか、車いすスペースと乗降用スロープ、ドアチャイムなどでバリアフリーに対応します。外国人観光客の利用を想定し、必要な情報を多言語で交互表示することができるフルカラーLEDの行先表示器も備えます。

熊本県と地元自治体、南阿蘇鉄道で構成される「南阿蘇鉄道再生協議会」は、全線復旧に合わせ、立野駅からJR九州の豊肥本線に直通し、肥後大津駅まで乗り入れる方針を決定しています。南阿蘇鉄道が使用している運転保安装置は「ATS-SN型」ですが、MT-4000形には、JR線への乗り入れを考慮したより高機能な「ATS-DK型」が採用されています。線路データを記憶した車上装置が走行位置と速度を常に監視し、速度超過時に自動的にブレーキが掛かる安全性を備えています。

ブレーキには、従来車両に使用していた自動空気ブレーキよりも応答性に優れた「電気指令式空気ブレーキ」が採用され、メンテナンス性も向上します。また、複数のブレーキ回路を保有しており、メインのブレーキに万が一不具合が生じても安全に車両を停止させることができます。

今後は営業運転に向け、総合的な試験や乗務員訓練が2023年1月下旬から始まります。また、1月以降に車両の納車式も開催される予定です。