南海電気鉄道は2023年10月21日(土)に南海線のダイヤを修正し、特急「ラピート」をはじめとする空港線の輸送力をコロナ禍前の2019年と同水準まで回復させて需要増加に対応します。
インバウンド増加で3年半ぶり「毎時2本」に
全車両座席指定の空港特急ラピートはかつて、難波駅〜関西空港駅間を上下線合わせて1日あたり66本運行していました。ところが、新型コロナウイルス感染拡大による航空旅客の利用衰退に伴い、2020年4月24日から一部列車の運休措置が取られました。この際、平日ダイヤはほぼ半減となる32本、土休日ダイヤは約7割減の18本にまで削減されています。
2021年5月22日に行われたダイヤ改正に合わせて運休列車の一部は運行を再開しましたが、昼間時間帯の本数が1時間あたり2本から1本に変更され、1日全体として48本にまで減便されました。その後、空港利用者の増加傾向を受けて運休措置は段階的に解消され、2023年2月に実施された午前時間帯の増便により現在は1日54本の運行となっています。
南海によると、2022年10月に政府が打ち出した水際対策の緩和により、インバウンド観光客を中心に空港線の利用が徐々に回復し、今後も継続した回復が見込めるとしています。今回のダイヤ修正では、平日・土休日とも1日12本のラピートを増便することにより、約3年半ぶりとなる1日66本体制が復活します。運転頻度も終日にわたり毎時2本に戻ります。
空港線の一般列車である「空港急行」の運行本数は修正後も現行通りですが、一部の列車の編成両数を6両から8両に強化して需要増加に対応します。
(特急「ラピート」と空港急行の運行本数推移、ダイヤ修正前後の多奈川線の輸送体系など詳細は下の図表を参照)
淡路・四国連絡を担った支線が4割減便
今回、支線の一つである多奈川線では運行本数の大幅な削減が実施されます。みさき公園駅〜多奈川駅間の2.6kmには現在、平日に46往復、土休日は37往復の列車が設定されていますが、ダイヤ修正後は平日26往復、土休日23往復となり、おおむね4割の列車の運転が取り止められます。上下線で始発列車と最終列車の時刻も見直されます。
いずれも、現在の利用状況を踏まえての見直しとしています。かつて急行「淡路号」などが走り、広域連絡輸送の一翼を担っていた多奈川線ですが、沿線の深日港から淡路島や徳島方面へのフェリー定期航路は廃止されてから30年以上が経過しています。線内3駅(深日町駅、深日港駅、多奈川駅)の1日平均乗降人員は、いずれも1,000人に満たない数にとどまっています。
好調で伸びしろもある空港線を純増で強化できればベストなのですが、流動の少ない支線区の減便にも同時に手を付けなければならないあたりに、コロナ禍ショックを受けた鉄道事業者が抱える不安定要素が透けて見えます。
ダイヤ修正ではそのほか、平日ダイヤで和歌山市駅19:41発の急行難波駅行について、運転区間が延長され、始発駅が和歌山港駅に変更されます。加太線と、2021年5月から代行バス輸送が行われている高師浜線についてはダイヤに変更はありません。