JR東日本は、多方面から羽田空港へ乗り換えなしでのアクセスを実現する「羽田空港アクセス線(仮称)」計画のうち、東京駅方面に直結する「東山手ルート」「アクセス新線」の本格的な工事に着手します。
東京駅〜羽田空港がダイレクト18分
全体構想は、羽田空港から新しく「アクセス新線」を整備し、既存のJR路線などに乗り入れて新宿・池袋方面、宇都宮・高崎・常磐方面、房総方面への直通運転を行うものです。国の交通政策審議会が2016年4月に出した答申の中で「国際競争力の強化に資する鉄道ネットワークプロジェクト」に位置付けられ、JR東日本は事業化に向けた準備を進めています。
計画ルートのうち、田町駅付近で東海道線に接続して東京駅方面に直通する「東山手ルート」ならびに「アクセス新線」の起工式が2023年6月に行われ、2031年度の開業を目指して工事が始まります。
東京駅から羽田空港まで鉄道を利用した場合、現在は30分程度を要していますが、開業後は約18分と大幅に早く到達でき、乗り換えも不要になります。また、上野東京ラインを介して宇都宮線・高崎線・常磐線とも直通し、広範なエリアからの空港アクセス改善効果をもたらします(羽田空港アクセス線の計画概要、東山手ルート・アクセス新線の工事区間位置図など詳細は下の図表を参照)。
もと貨物線と新設トンネルを結合
今回の着工区間のうち、東海道線接続部から東京貨物ターミナルまでが「東山手ルート」と呼ばれ、国土交通省が2023年1月31日(火)付で鉄道施設変更認可を行いました。1998年(平成10年)から休止している貨物線の「大汐線」が有効活用され、橋りょうや高架橋などの既存設備は旅客化に必要な改修や改良が施されます。
田町駅の東京寄りにある山手線の引上げ線は撤去され、山手線外回り、京浜東北線南行、東海道線上りの各線路が順次移設されます。これにより、東海道線の上下間に新たなスペースが確保され、ここに構築するトンネル内に東海道線と大汐線の接続線が敷設されます。
また、東京貨物ターミナル内では、JR東日本が保有する約2万3千㎡の用地を活用し、羽田空港アクセス線の運行に必要となる車両留置線や保守基地線が整備されます。
貨物ターミナルから羽田空港新駅(仮称)までは、国土交通省が2023年3月24日(金)付で工事施工認可を出した「アクセス新線」区間です。大汐線を延長するかたちで、公共施設や道路、運河の下を最大深度約50mで通過する、延長約4.2kmの複線シールドトンネルが新設されます。
羽田空港新駅は、第1・第2旅客ターミナル間にある空港構内道路の下につくられる、地下1階の浅い地下駅です。島式1面2線ホームは最大幅約12m、延長約310mで、ホームから第2ターミナルまでは高低差なしで移動できます。一方、第1ターミナルとは首都高速や国道を挟んで立地しているため比較的距離があり、既存の地下通路などを経由してアクセスする必要があります。
なお、インバウンド需要の拡大に伴い羽田空港は首都空港としての重要性が高まっており、鉄道アクセス強化は空港の機能拡充につながる取り組みと位置付けられています。空港島内の駅やトンネルの基盤設備は空港整備事業の一環とされ、国が主体となってシールドトンネルや開削トンネルを施工します。