カーブで“振られない” 特急「しなの」新型車両 次世代振子制御385系 どうなる前面展望?

JR東海は、名古屋駅〜長野駅間を結ぶ特急「しなの」の車両取り替えを見据え、次世代の振子制御技術を用いた新型車両「385系」を導入して乗り心地のさらなる向上を目指します。

特急「しなの」383系の後継車両として2026年後に量産先行車の導入が予定されているJR東海385系電車のエクステリアイメージ(画像提供:JR東海)
特急「しなの」383系の後継車両として2026年後に量産先行車の導入が予定されているJR東海385系電車のエクステリアイメージ(画像提供:JR東海)

現行車両の乗り心地…弱点は「雨」

一般に、高速で走行する列車がカーブを通過すると、乗客に大きな遠心力がかかることで外側に振られ、乗り心地が悪くなります。カーブ箇所の線路設備には「カント」と呼ばれる傾斜が付けられていますが、これに加えて、カーブ区間のみ車体を傾斜させ、遠心力をさらに緩和させる車両の仕組みを「振子制御」と呼びます。

特急「しなの」に1995年(平成7年)から投入されている現行の383系電車も、当時の制御技術によりカーブ通過時の速達性と乗り心地の両立を目指した振子式車両です。現在も国内最速となる、基本速度に最大35km/hを加えた速度でのカーブ走行を可能としており、木曽谷をはじめとする、山あいでカーブを繰り返す区間での所要時間短縮に貢献しています。

383系の振子制御は、カーブ手前の地上に設けられた「地上子」の通過を検知した際、カーブ開始までの距離を取得します。その後の車輪の回転数などから距離を計算し、最初に取得した距離に達したタイミングで自動的に振子の傾斜を始めます。

しかしながら、この制御方式には弱点があります。雨天などにより車輪が線路上を滑りながら回転する「滑走」が生じる場合、回転数による計算に誤差が生じます。カーブ開始位置からずれることなく車体を傾斜させることが重要な振子制御ですが、このような状況では“振り遅れ”と呼ばれるズレが発生し、乗り心地に影響してしまいます。

(特急「しなの」運行ルートの路線図、385系に採用される次世代振子制御のイメージなど詳細は下の図表を参照)

【路線図で解説】特急「しなの」運行ルートの路線図、385系に採用される次世代振子制御のイメージ

ホームドア普及を後押しするひと工夫も

385系には新たに、車両の回転や向きの変化を検知する「ジャイロセンサ」が搭載され、車両とカーブの位置関係を常に監視します。地上子や車輪回転数に依存することなくカーブ開始位置を正確に検知でき、さまざまな状況での乗り心地向上に寄与するとしています。この次世代振子制御を用いた走行試験では、乗り心地の評価指標が現行の振子制御より約15%改善するという結果が出ています。

安全性の向上も385系の特長です。2022年7月に登場したハイブリッド特急車両「HC85系」と同様、車両機器の稼働状況や故障などを遠隔で状態監視できるシステム「DIANA」が搭載され、車内防犯カメラも導入されます。

また、中央本線を走行する普通列車車両の315系と車体長やドア位置を統一する工夫も施されます。これにより、開口幅の狭いホーム可動柵(ホームドア)を採用できるようになり、ホーム上の安全性を低コストで向上できるメリットが生まれます。

四季を彩る自然景観に恵まれた中央本線を走行する車両にふさわしく、385系のエクステリアデザインのテーマには「アルプスを翔ける爽風(そうふう)」が掲げられています。東濃から信州にかけての山なみを颯爽と駆け抜けていくさまを表現しており、「ワイドビュー」を特長にしている現行383系と同様、両先頭車には前面展望を確保するとのことです。

385系の導入計画ですが、まず量産先行車として8両編成1本が新製され、2026年度の完成後に次世代振子制御などを確認する走行試験が約1年間実施されます。量産車については2029年度頃を目標に投入できるよう検討を進めているとしています。

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