JRグループ6社(JR北海道、JR東日本、JR東海、JR西日本、JR四国、JR九州)は、鉄道を使って日本全国をおトクに周遊できる「ジャパン・レール・パス(JAPAN RAIL PASS)」を訪日観光客向けに発売していますが、商品内容を一部拡充した上で価格を値上げします。
「のぞみ」「みずほ」利用は条件付き
パスを購入できるのは原則として、海外から日本へ「短期滞在」の資格で入国する外国人旅行者です。パスには「普通車用」と、グリーン車も利用できる「グリーン車用」の2種類があり、それぞれ有効期間が異なる「7・14・21日用」の設定があります。利用可能範囲は全国のJR全線やJRバスなどで、有効期間内なら新幹線、特急列車も含めて何度でも乗り放題です。
ただし、他の列車より割高に料金設定されている東海道・山陽・九州新幹線の「のぞみ」「みずほ」については現在のところ、自由席も含めてパスでの乗車は認められていません。東海道新幹線で「のぞみ」が運転を開始したのは1992年(平成4年)3月ですが、当初から利用が制限されており、どうしても利用したい場合は特急料金のほか、当該区間の運賃も別途支払う必要があります。
「ジャパン・レール・パス」は2023年10月頃をめどに商品見直しを予定しており、ようやく「のぞみ」「みずほ」も利用できるようになります。ただし、無条件での解禁ではなく、乗車前に「専用のきっぷ」を追加で購入するというワンステップが必要となります。このきっぷの価格などについては現在検討中で、決まり次第告知するとしています。
そのほか、パスをお持ちのインバウンド旅行者が、日本国内の観光施設で割引などの特典を受けられるサービスの新たな提供も予定されています(「ジャパン・レール・パス」の利用資格、利用できる区間・列車、現行と改定後の価格比較など詳細は下の図表を参照)。
「普通車用」「グリーン車用」とも大幅値上げ
このように商品内容が拡充される「ジャパン・レール・パス」ですが、価格の見直しも同時に行われます。
「普通車用」を例に取ると、7日間有効のものは現在、JRが指定する海外の販売店・代理店では29,650円、専用販売サイト「JAPAN RAIL PASS Reservation」では33,610円で発売されています。改定後はこの価格差がなくなり、発売形態にかかわらず50,000円に統一されます。そのほか、14日間用は80,000円、21日間用は100,000円に統一されます。
「グリーン車用」についても、発売方法に依存しない統一価格が採用されます。「普通車用」「グリーン車用」全券種の平均では、現行の海外窓口発売価格を基準とすると約88%の値上げで、大幅な価格改定となります。
JRグループは、今回の利用列車拡大のほかにも、これまでサービス向上のためさまざまな施策を行ってきたとしています。新幹線の延伸による周遊可能エリアの拡大、専用サイトでの発売や指定席予約の導入、自動改札機の対応などの具体例を挙げ、値上げへの理解を求めています。
なお、2017年(平成29年)3月以降、日本国内の主要駅等の窓口では、引換券がなくても「ジャパン・レール・パス」を直接購入できる試験発売が実施されていました。この取り扱いは終了し、専用サイトで購入後、国内窓口でパスに引き換える方法に統合されます。