「KTXイウム」がKORAIL中央線にデビュー “純韓国製”の新型高速車両

韓国鉄道公社(KORAIL)は2021年1月5日(火)、中央線(チュンアンソン、중앙선)の清凉里駅(チョンニャンニ、청량리)〜安東駅(アンドン、안동)間で新たに高速鉄道「KTXイウム(KTX-이음)」の運行を開始しました。

【路線図で解説】1月5日から中央線に「KTXイウム」運転開始(1)

中央線では線路改良工事が段階的に行われており、2020年末までに西原州駅(ソウォンジュ、서원주)〜鳳陽駅(ポンヤン、봉양)間、丹陽駅(タニャン、단양)〜北永川駅(プギョンチョン、북영천)間などに新しい複線電化線路が完成しています。曲線が多かった既存路線と比べて直線的に移動できるようになり、所要時間の短縮が可能となりました。

1月5日(火)から中央線の運行ルートが新線に置き換えられました。原州駅(ウォンジュ、원주)と安東駅は線形改良のため、既存の駅から数km移設されています。

同時に時速260kmの高速走行に対応したKTXイウムの運行が開始しました。平日は7往復、週末は8往復が運行され、ソウル特別市内の清凉里駅と慶尚北道の安東駅間を最速2時間ちょうどで結びます。これまで高速鉄道の恩恵を受けていなかった忠清北道北部や慶尚北道北部に初めて乗り入れることで、韓国政府とKORAILが目指す「全国KTX生活圏」の実現に一歩近づいたことになります。

【路線図で解説】1月5日から中央線に「KTXイウム」運転開始(2)

KTXイウム車両は現代ロテム社が製造しました。従来のKTXで採用してきた、両先頭車両を客室を持たない電動車として他の車両をけん引する「動力集中方式」を改め、複数の車両に電動装置を分散して配置する「動力分散方式」がKTXとして初めて採用されました。動力集中方式を用いた高速鉄道としてはフランスのTGVが代表的ですが、そのフランスの技術協力のもとに代々製造されてきたKTXにおいて、KTXイウムは大きな転換点となります。

客室内部では、各座席ごとに分割された窓の配置となったことにより、日除けカーテンの上げ下げが容易になっています。また、すべての座席にコンセントやUSB端子、スマートフォンの無線充電器が設置されるなど、快適性が向上されています。

優等車両には、YouTubeなどのインターネット閲覧が可能な個人用モニターが各座席に設置されています。従来のKTXの優等料金は一般車両運賃の40%ですが、KTXイウムでは20%に設定され、これまでよりも気軽に利用できます。

KTXイウムの運行開始により、これまで中央線の主力だった特急列車「ITX-セマウル号」(ITX-새마을)は廃止となりました。急行列車「ムグンファ号」(무궁화)は本数が半数以下に減少したものの、新線の効果により所要時間は清凉里駅〜安東駅間で平均48分短縮されています。KORAILは、通勤時間帯の利便性は可能な限り維持し、停車駅を増やして利用客の不便を最小限に抑えたとしています。

一方、中央線の旧線区間は列車の運行が停止され、利用者が少ないことを理由に多くの中間駅が廃止となりました。また、清凉里駅と釜山広域市内の釜田駅(プジョン、부전)との間に運行されていた、韓国国内では希少な「夜行ムグンファ号」が廃止されるなど、ローカル列車が徐々にKTX中心の輸送体系に置き換わっています。

今後、中央線KTXは複線電化工事の進捗に合わせて運行区間を拡大し、東海南部線に直通して釜山方面に乗り入れる予定です。