嵯峨野トロッコ列車 4月に4割値上げ 片道880円に インバウンド消失で打撃 営業赤字3億

嵯峨野観光鉄道は国土交通省に対し、2022年1月19日(水)付で旅客運賃の上限変更に関する認可申請を行いました。

「嵯峨野トロッコ列車」を率いる嵯峨野観光鉄道DE10形ディーゼル機関車(auag0130/写真AC)
「嵯峨野トロッコ列車」を率いる嵯峨野観光鉄道DE10形ディーゼル機関車(auag0130/写真AC)

申請内容は現在、乗車区間にかかわらず均一の630円(大人)となっている普通旅客運賃の上限を880円に改定するものです。値上げ幅は250円で改定率は39.6%です。認可されると2022年4月1日(金)に運賃改定が実施される予定です。

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申請理由として同社は、安全投資やサービス向上施策を続けていく上で、現在の運賃では抜本的な収支の改善が困難なことを挙げています。

【図表で解説】嵯峨野観光鉄道 2022年4月1日(金) 普通運賃値上げへ

山陰本線の複線電化に伴い廃線になった保津川沿いの区間を転用し、1991年(平成3年)に日本初の“観光を目的として開業した鉄道”として「嵯峨野トロッコ列車」の営業が開始しました。初年度の利用者数は69万人でしたが、保津川渓谷の四季折々の景観を楽しめる人気観光コンテンツとしてインバウンド客にも浸透し、2017年度は128万人の利用がありました。

その後、新型コロナウイルスの影響により利用の約7割強を占めていたインバウンド客の利用が消失し、2020年度の輸送人員はピークの約36%の46万人まで大きく落ち込みました。営業黒字が続いていた収支も大幅に悪化し、2021年度は3億5千万円の営業赤字が見込まれています。

これまで設備投資費や列車本数などの見直し、諸経費の削減といったコスト削減の取り組みに加え、旅行会社との連携によるトロッコ列車を組み入れた商品造成、クラウドファンディングを活用した沿線ライトアップなどのサービス改善を行ってきたとしています。

今後もマクラギのコンクリート化や落石防止対策、予約販売システムの改善、多言語案内システムの構築といった取り組みを予定しているとのことです。コロナ禍収束後のインバウンド需要回復も見込まれるものの、経営の健全化を図りつつ持続的な観光コンテンツを提供していくために運賃変更を申請したと説明しています。

なお、嵯峨野トロッコ列車は2022年2月28日(月)まで点検整備のため冬季休業期間となっています。