近畿日本鉄道(近鉄)は、統合型リゾート(IR)の整備が計画されている大阪市の人工島「夢洲(ゆめしま)」と沿線各地を直通で結ぶ列車の技術開発を進めています。
集電方式の壁を超える
夢洲は2025年大阪関西万博の開催地であり、その後は国際会議場や展示場、ホテル、エンターテインメント施設、カジノなどの一体整備が計画されています。アクセスを担うOsaka Metro(大阪メトロ)中央線では、コスモスクエア駅から夢洲への延伸工事が進められています。
相互直通運転を行っている中央線とけいはんな線は「第三軌条方式」の路線で、線路と並行して給電用レールが敷かれ、列車は台車に備え付けられた「集電靴」と呼ばれる装置で電気を集めながら走行します。一方、奈良線をはじめとする近鉄の他の路線は張られた架線からパンタグラフで集電する「架空電車線方式」であるため、直通列車は両方の集電方式に対応する必要があります。
近鉄は車両メーカーの近畿車輛(本社:大阪府東大阪市)、台車部品メーカーなどと共同で、直通列車の台車に取り付ける「可動式第三軌条用集電装置」を開発しています。架線区間では集電靴が走行の支障となるため、使わない集電靴を折りたたんで収納する機能が新たに備えられ、直通先でも問題なく運行できる仕組みです(詳細イメージと路線図は下図を参照)。この装置の試作品が完成し、これから各種試験に着手するとのことです。
近鉄は魅力的な車両の投入による観光利用の拡大に力を入れており、名阪特急「ひのとり」、伊勢志摩への観光特急「しまかぜ」、大阪・奈良・京都を結ぶ観光特急「あをによし」などを導入してきました。夢洲はIR整備により国内外から多くの人が集まると見込まれており、直通列車の実現により観光需要をさらに取り込む狙いがあります。近鉄は、夢洲から近鉄沿線各地に利用客の誘導を図ることで地域の観光振興に貢献したいとコメントしています。