野岩鉄道は、1986年(昭和51年)の開業年から運行を続けている「6050型」車両を大規模改修するため、クラウドファンディングを通して支援を募集しています。
東武・会津鉄道ではすでに引退
かつては東武鉄道の浅草駅から会津鉄道の会津田島駅まで長らく直通運転で活躍していた車両で、夜行列車「スノーパル」「尾瀬夜行」、座席指定の快速急行「だいや」などに使用されていた過去もあります。折りたたみテーブルを設置したボックスシートがメインの車内は長距離列車ならではの旅情にあふれ、家族連れやグループでの利用者に今でも好評です。走行性能面では砂撒き装置、1車両あたり2基のパンタグラフが搭載されており、秋季の落ち葉による空転対策、豪雪地帯での凍結防止策がとられているのも特徴的です。
東武鉄道、会津鉄道とともに3社が所有していた6050型ですが、老朽化の進行、利用状況に合わせた減便や運転区間縮小などの理由でほとんどの車両がすでに運行から外れています。野岩鉄道の所有車両のみが2022年3月のダイヤ改正以降も運行を続けていますが、共通運用に備える必要がなくなったことから4月に1編成が廃車となり、定期運行に就いているのは残り2編成という状況です。この2編成も製造から36年が経過していることから車体の劣化が進み、部品の調達も難しくなってきているとのことです。
希少な6050型を今後も長く使い続けるため、1編成(61103編成)観光列車へと車両改修するプロジェクトが始動しました。しかしながら、少子高齢化などにより野岩鉄道の利用者は年々減少していることに加え、新型コロナウイルス感染症の影響により、全体の98%を占めていた観光利用はこの2年で大きく落ち込んでいます。厳しい経営状況の中で多額の費用がかかる改修費用を捻出するため、クラウドファンディングサイト「READY FOR」を活用して支援が募られます。今回のクラウドファンディングは「All-or-Nothing形式」での挑戦のため、支援金が目標金額の1500万円に達しない場合はプロジェクト自体が中止となり、改修は行われません(クラウドファンディングの概要、路線図など詳細は下の図表を参照)。
体感できる「本物の運転台」
目標金額を達成した場合、6050型は「家族で乗って楽しい電車」へと生まれ変わります。改修の目玉となる、客室内に設置される「模擬運転台」には実物の運転台が使用され、運転士気分を体感できます。調達できた金額によっては、同社線のジオラマを走る模型電車を併設して連動させる計画もあるとのことです。また、模擬運転台の付近には畳座席が設置され、情緒あふれる車内空間から沿線の自然の景色を楽しめるようになります。さらに、2名座席の一部を取り除いて多機能スペースや自転車置き場が整備され、サイクルトレインとしての活用も考慮されています。
野岩鉄道の二瓶正浩社長は、「当社やこの地域を一緒に盛り上げていこうという人の熱い思いをきっと実現できる内容だと思っています。ぜひ、笑顔が生まれる列車運行の実現に力を貸していただきたいです」と支援を呼びかけています。また、2022年下期から野岩鉄道線内で東武の「DL大樹」を運行予定であることを明らかにしています。将来的には、東武が所有するC11型蒸気機関車によるSL列車を運行する構想もあるとし、首都圏と会津地方を一本の線路でつなぐ同社の存在意義を活かし、新たな価値をつくり上げていきたいと抱負を語っています。