留萌線の廃止届出 石狩沼田〜留萌間は23年3月まで バス代替へ 残区間は3年限定で存続

JR北海道は、バスへの置き換えについて沿線自治体と協議していた留萌本線について、石狩沼田駅〜留萌駅間(35.7km)の鉄道事業を先行して廃止する届出を国土交通大臣宛てに提出しました。

留萌本線などで運行しているJR北海道キハ54形気動車(写真AC/中村 昌寛)
留萌本線などで運行しているJR北海道キハ54形気動車(写真AC/中村 昌寛)

深川〜石狩沼田間の部分存続を図るも…

届出上の廃止予定日は2023年9月30日(土)とされていますが、提出後に北海道運輸局が行う意見の聴取において、同社は廃止日の繰り上げを求める陳述を行う予定です。この取り扱いは鉄道事業法第28条の定めによるもので、認められた場合、廃止日は同年4月1日(土)に繰り上げられ、列車の運行は同年3月31日(金)をもって終了となります。

JR北海道は2016年(平成28年)11月に「単独では維持することが困難な線区」を公表し、この中で留萌本線の深川駅〜留萌間(50.1km)を「輸送密度(1km当たりの1日平均旅客数)200人未満」の利用が極めて少ない線区として取り上げました。同区間は冬期間には吹き溜まりが多く発生し、除雪対応に特に苦慮しているほか、老朽化したレールや橋りょうの管理も問題とされています。当時、年間で約7億円の運営赤字が発生していたほか、老朽土木構造物の維持更新ため、今後20年間で30億円程度の費用が別に必要であることも記されました。そして、持続可能な交通手段とするため、バスへの転換について沿線地域と相談を始めたい意向を示しました。

これを受け、沿線の2市2町(北海道深川市、秩父別町、沼田町、留萌市)は、JR北海道との協議の場である「留萌本線沿線自治体会議」を2018年(平成30年)5月から継続的に設けてきました。同年7月には国土交通大臣からJR北海道に対して経営改善の監督命令が行われ、留萌本線の維持に対して国から支援を行うには、地方自治体からも同水準の支援による協力を得る必要性が明示されました。

同年8月の自治体会議では、石狩沼田駅〜留萌駅間の部分廃止を容認する一方、残る深川駅〜石狩沼田駅間を存続した場合の運行経費の分担や、廃止した場合の代替交通策についてJR北海道と話し合われています(廃止区間の路線図、留萌本線の経営状況、経歴など詳細は下の図表を参照)。

【路線図で解説】JR北海道 留萌線 石狩沼田〜留萌間の鉄道事業廃止を届出

輸送の主役は高規格道路へ

沿線の人口減少に加え、並行する高規格道路(深川留萌自動車道)の延伸などモータリゼーションの進展により留萌本線の利用は減少を続けており、近年は通学利用が大半を占めています。新型コロナウイルス感染症の影響もありJR北海道の経営状況は厳しく、同社は2022年7月21日(木)の自治体会議において、留萌本線の鉄道事業を段階的に廃止することを提案しました。

石狩沼田駅〜留萌駅間は2023年3月末まで運行して先行廃止し、深川駅〜石狩沼田駅間は2026年3月末まで3年間、部分運行を続けた上で廃止することが示されています。部分運行期間の運行費用や、折り返し設備の設置費用はJR北海道が全額負担します。代替交通への最大18年間の支援、1自治体当たり約7000万円の「まちづくり支援」なども織り込まれています。

同日の結論は持ち越しとなりましたが、2022年8月30日(火)に開かれた自治体会議において、沿線の全首長とJR北海道は段階廃止について合意しました。1910年(明治43年)に最初の区間が開業し、110年以上続いた留萌本線の歴史が終わりを迎えます。なお、海沿いの留萌駅〜増毛駅間(16.7km)については、維持困難な区間として2016年12月5日付ですでに廃止されています。

留萌本線の部分廃止後、現在は沿岸バス(本社: 留萌市)と道北バス(本社: 旭川市)が共同運行する路線バス「留萌旭川線」が代替交通手段と位置付けられます。廃線区間にある各駅も経由するため、今後の維持存続が必要な交通体系としてJR北海道による支援が行われます。既存のバスが運行していない早朝や夜間には、深川〜留萌間で予約制乗合タクシーが運行され、列車に代わる通学・通勤手段が確保されます。また、高規格道路の速達性を活用し、旭川への速達便を新設する実証実験も計画されており、現在、JR北海道や交通事業者と最終協議が行われています。