東横線に「Q SEAT」 9000系後継の車両新造 東急の設備投資431億円 タッチ決済導入も

東急電鉄は、2023年度に総額431億円の設備投資を行い、安全性のさらなる追求を中心に、循環型社会実現への貢献やユニバーサルサービスの強化など、時代に即した鉄道サービスの提供に取り組みます。

大井町線で運行している東急9000系電車(Katsumi/TOKYO STUDIO)
大井町線で運行している東急9000系電車(Katsumi/TOKYO STUDIO)

五反田駅は固定式ホーム柵→ホームドアに

そのうち339億円が安全投資に向けられ、豪雨や地震などの自然災害対策、踏切の安全性向上、テロなどに備えたセキュリティ強化が続けられます。車内防犯カメラは2020年7月をもって同社のすべての所有車両への設置が完了していますが、車内トラブルの発生を瞬時に把握するため、リアルタイムで確認できるよう高機能化されます。

ホームの安全対策も他社に先行しており、こどもの国線・世田谷線を除く東急線全駅に「ホームドア」または「センサー付き固定式ホーム柵」が設置済みです。効果はてきめんで、線路転落の件数は2014年度に131件ありましたが、2022年度は7件と大幅に減少しています。今年度はさらなる安全推進のため、五反田駅で固定式ホーム柵からホームドアへ設備を更新するための設計を始めます。

大井町線では9000系・9020系車両の老朽化が進んでおり、これらの更新に向けた車両の新造に着手し、安全性と快適性の向上を目指します。9000系は東横線、9020系は田園都市線(2000系を改番)向けに製造された車両で、大井町線に転属する際にそれぞれ5両編成化されました。製造からおおよそ30年以上経過し、現在は東急の所有車両の中で最古参グループとなっています。

また、無線通信技術を活用して列車の安全運行を確保する「CBTC(Communications-Based Train Control)システム」の設計・製作を進め、2028年度に田園都市線、2031年度に大井町線で導入する予定です(東急電鉄が2023年度に取り組む主な設備投資、桜新町駅のリニューアルイメージなど詳細は下の図表を参照)。

【図表で解説】東急電鉄が2023年度に取り組む主な設備投資、桜新町駅のリニューアルイメージ

田園都市線の地下駅リニューアル第2弾

アフターコロナの新しい生活様式に対応したサービスとして、有料座席指定サービス「Q SEAT」を大井町線・田園都市線に続き、東横線にも拡大します。今年度のサービス開始に向け、2両のロング・クロスシート転換車両を組み込んだ10両編成が2022年10月以降、東横線に順次導入されています。

2023年夏からは、クレジットカードのタッチ決済やQRコードを活用した乗車サービスに関する実証実験が開始します。日々変化するニーズにスピード感を持って対応していくことが目的で、交通と商業の連携といった多種多様なサービスをスマートフォンなどでシームレスに利用できる環境を整えます。

東急はバリアフリーの考えを進化させ、誰もが等しく利用しやすいユニバーサルな鉄道サービスを目指しています。ホームと車両の段差や隙間を縮小する取り組みを続けており、今年度は池上線と東急多摩川線を中心に順次工事を実施します。また、すべての旅客トイレは洋式化と温水洗浄便座の導入が完了しており、今年度は駅構内へのトイレ新設や、複数駅でのリニューアル工事を実施します。

1977年(昭和52年)に開業した田園都市線の地下区間5駅では、壁面や床などの既存材を最大限活用するなど環境に配慮したリニューアルプロジェクト「Green UNDER GROUND」が進められています。2021年に着工した第1弾の駒沢大学駅に続き、2023年5月15日(月)に第2弾となる桜新町駅のリニューアル工事が始まりました。駒沢大学駅は2024年夏、桜新町駅は2026年夏に完成予定です。

また、CO2排出量を削減する木材を活用した駅改良プロジェクト「木になるリニューアル」が戸越銀座駅、旗の台駅、長原駅で展開されましたが、新たな駅での実施に向けて検討が進められます。駅構内照明のLED化を進めるほか、電車のブレーキにより発生する回生電力を駅の照明や空調などに有効活用する仕組みの導入など、脱炭素化への取り組みも加速します。

設備投資計画ではそのほか、大井町線では計6か所の踏切解消に向け、戸越公園駅付近の連続立体交差化に向けた具体的な調査や設計を進めることが示されています。

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