名古屋鉄道は、2023年度に総額307億円の設備投資を行い、通勤型車両の新造、高架化工事の推進、安全性向上や省力化につながるシステム導入、沿線開発による地域活性化などに取り組みます。
高架化に伴い三河知立駅を移設
知立駅付近では、愛知県を事業主体とする連続立体交差事業が2010年から続いています。平面を走行する名古屋本線と三河線を高架化することで10箇所の踏切を除去し、線路により分断されている市街地の生活環境を改善する狙いがあります。
2023年3月21日(火・祝)から名古屋本線の上り線が高架に切り替わり、知立駅では2階高架ホームの使用が開始しました。今後は2025年度に同下り線、2027年度に三河線の高架切替が行えるよう工事が進められます。
高架化予定区間に含まれる三河線の三河知立駅は、名古屋本線の前身である旧・愛知電気鉄道とは別会社の旧・三河鉄道が開設しました。両者それぞれのターミナルとして発展した歴史的経緯を現在も引き継ぎ、三河知立駅と知立駅との距離は約700mと近接しています。
今回の高架化工事に伴い、駅配置のバランスや建設費を考慮した結果、三河知立駅を高架の範囲外へと移設することが決まりました。新たな三河知立駅は現駅から豊田市駅方面へ約900mの位置で、今年度中の開業を目標に整備中です。
知立駅付近のほかにも、瀬戸線喜多山駅付近、三河線若林駅付近、尾西線苅安賀駅付近でも高架化工事が進められ、踏切除去による安全性向上と交通渋滞解消が図られます。
そのほかの安全投資として、大規模地震の被害を最小限に抑えるために高架橋柱の耐震補強を行います。また、踏切道の監視システムに新たにAI画像解析装置を導入し、取り残された人や車の検知能力を向上させます(名鉄が計画している主な設備投資項目、推進中の高架化工事で除去される踏切の数など詳細は下の図表を参照)。
東岡崎駅南口に商業施設「μPLAT」
今年度新造される通勤型車両は、4両編成の9500系が3本、2両編成の9100系が3本の計18両です。いずれも環境に配慮した車両で、置き替え対象の従来型車両に比べ、走行時の使用電力量は5割程度に抑えられます。また、車内の安全確保のため、1両あたり3箇所に車内防犯カメラを装備します。
金山駅では大規模リニューアルが引き続き実施されます。2022年度は中央・東改札内に新たなエレベーターが設置され、ホームまで段差なしで移動できるルートが多重化されました。また、同改札内のトイレ改修工事が完了し、バリアフリートイレのほか、あらゆるニーズに対応した共用トイレ、女性トイレ内のパウダーコーナーなどが整備されています。
今年度は中部国際空港(セントレア)への拠点駅としての機能を強化するため、中部国際空港駅の到着時刻や、特別車の空席情報も表示する専用の案内表示器が中央改札口に設置されます。同改札口にはウォークインタイプの改札も新設され、係員によるきめ細やかな対応が行える環境が整います。
また、商業エリア「μPLAT(ミュープラット)金山」は改札内も含めて店舗リニューアルが行われるほか、西改札口側にも新たな商業区画が展開され、駅利用者の利便性がより高まります。金山駅ではホームドアの実証試験も予定されており、導入準備が進められます。
西三河地区の拠点駅である名古屋本線の東岡崎駅では、北口・南口周辺で一体的な再開発が計画されています。その中で、南口に直結する場所に新たにオープンする商業施設「μPLAT東岡崎」の工事が始まります。また、犬山線の布袋駅では、かつての駅舎が名鉄最古の木造駅舎だったことにちなみ、環境に優しい木造の商業施設が整備されます。いずれの施設も2024年春に開業予定です。
ところで、新型コロナウイルス感染症を契機に輸送需要が減少する中、名鉄は経費削減に取り組むほか、必要な設備投資費用の一部を利用者に負担してもらうための運賃改定を検討しています。2024年春頃の改定に向けて申請の準備を進めており、全体の改定率は10%程度となる見込みです。現行170円の初乗り運賃は、10円値上げの180円とすることが想定されています。
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