ハワイに都市鉄道が開業 車両もシステムも日立製 米国初の無人運転 2年後には空港直結

米ハワイ州で初めてとなる本格的な都市鉄道「スカイライン」の建設がオアフ島のホノルルで進められてきましたが、2023年6月30日(金)に第一期区間で営業列車の運転が始まりました。

日立レールが製造したホノルル都市鉄道「スカイライン」の車両(画像提供:Hitachi Rail)
日立レールが製造したホノルル都市鉄道「スカイライン」の車両(画像提供:Hitachi Rail)

“欧州に強い”日立がトータルで受注

観光用のわずかな鉄道のみが残るハワイでは、通勤や外出時の自家用車への依存度が高く、深刻な道路渋滞と環境への悪影響が長年の課題となっています。これらを解消するための都市鉄道の計画は2006年のホノルル市議会で初めて採択され、建設主体として半独立的な組織、ホノルル高速鉄道輸送機構(HART)を設立してプロジェクトが始まりました。

完成まで紆余曲折あり、長引く環境調査や考古学調査、新型コロナウイルス感染症といった要因により工事遅延がたびたび発生しました。当初見込みは40億ドル程度だった建設コストが大きく超過し、100億ドル以上に膨らんだことも問題となりました。良くも悪くもホノルル史上最大の公共事業となり、市は過去数回にわたり消費税や宿泊税を引き上げるなどして財源不足に対処してきました。

最初に開業したのはホノルル西部の郊外区間で、「クアラカイ/イースト・カポレイ」駅から「ハラワ/アロハ・スタジアム」駅までの17.7kmです。9つの駅が設けられ、ハワイ語の地名表記と、英語による地区や最寄り施設の名称を併記した駅名が特徴的です。ほとんどが高架線路ですが、車両基地のある「ハーラウラニ/リーワード・コミュニティ・カレッジ」駅周辺のみ例外的に地平を走ります。

踏切による平面交差はなく、米国の都市鉄道で初めて運転士が乗務せず、センター制御により管理する完全自動運転を実現しています。車両の開発と鉄道システム全般の構築は日立製作所のグループ会社、日立レール(本社:イタリア・ジェノヴァ州)が受注し、営業開始後のシステム運用や保守も一手に引き受けます。

日立は鉄道事業のグローバル展開に力を入れており、イタリアの鉄道システム会社の買収、イギリス現地での車両製造など欧州を中心に実績を重ねてきました。今回のホノルルでの納入は、これまで存在感の薄かった米国での事業拡大に向けた大きな足がかりとなりそうです。

(ホノルル都市鉄道「スカイライン」の路線図、営業時間、車両や駅のイメージなど詳細は下の図表を参照)

【路線図で解説】ホノルル都市鉄道「スカイライン」の路線図、営業時間、車両や駅のイメージ

ホノルル中心部までいつ延伸?

スカイラインには4両編成の車両が20本導入され、路線バス10台分に相当する1列車あたり最大800人の輸送力で渋滞緩和を狙います。列車は10分間隔で、当初の運転時間帯は5時(週末は8時)〜19時までと短めの設定です。バリアフリー設備としてエレベーターやホームドア、電車内の車いすスペースが完備されているほか、持ち込んだ自転車を立てて固定できるラックも車内に備わっています。

運賃は1乗車につき3ドルで、市バス「TheBus」と共通のICカード「HOLOカード」を利用できます。改札でHOLOカードを最初にタップしてから2時間半以内なら、次のバスや電車に乗車した際に運賃を引き去らない乗り換え無料サービスが適用されます。スカイライン開業に伴う公共交通の区間重複を避けるため、一部のバスは駅での乗り換えを前提とした路線網に再編されています。

約30kmある全体構想の第2段階として、アロハ・スタジアム駅から東へ延びる「カハウイキ/ミドル・ストリート・トランジット・センター」駅までの約8kmの区間が整備されます。2025年夏に開業する予定で、この時点でダニエル・K.イノウエ国際空港にも駅が設けられ、観光客にとっても身近な鉄道路線となりそうです。

ホノルルの中心市街地に到達する第3段階、「カアカウククイ/シヴィック・センター」駅まで約5kmの延伸は2031年までかかる見込みです。当初はさらに約1km東に位置する「カリア/アラ・モアナ・センター」駅までの整備が予定されていましたが、予算の大幅な超過を受けたプロジェクト見直しにより計画から外され、現時点での開業は未定となっています。

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