【特集】Luupが国内初の「ヘルメット任意」 渋谷・新宿で「電動キックボード」シェア

都内ポートでサービス初日をリポート

都内6区(渋谷区・新宿区・品川区・世田谷区・港区・目黒区)に展開しているLUUPポート約300か所のうち、電動キックボードの乗り降りが可能なのは約200ポートです。対応ポートは順次増やしていく予定とのことです。利用料金は初乗り10分110円、その後1分につき16.5円(税込)です。LUUP公式Twitterアカウントでは、30分利用が3回分まで無料となる「初回限定クーポン」が配布されています。

都内での実質的なサービス初日となった4月24日(土)、渋谷駅付近の「渋谷マークシティ」「宇田川カフェ」、そして新宿駅西口の「新宿小田急パーク」の各ポートには1〜3台の電動キックボードが駐車されていました。電動キックボードに対応しているポートは、LUUPアプリの地図に赤いアイコンでわかりやすく示されています。ポートごとの貸出可能な台数もアプリで事前に確認可能です。

ポートは路面に書かれた、LUUPのテーマカラーであるライトグリーンの線で囲まれただけの簡易なもので、サイズは電動キックボードがピッタリ入るだけの省スペース設計です。同じポート内には、先行してシェアサービスが行われている電動アシスト自転車が並んでいましたが、その長さは電動キックボードとほぼ同じで、LUUPのサービス設計はあくまで自転車ではなく、キックボードが基準となっていることがよくわかります。このシンプルさ故に、路地裏などのちょっとした空きスペースにもポートを増設できるというのにも納得です。

全長がほぼ同じのLUUPの電動キックボードと小型電動アシスト自転車(「宇田川カフェ」ポートにて)(Katsumi/TOKYO STUDIO)
全長がほぼ同じのLUUPの電動キックボードと小型電動アシスト自転車(「宇田川カフェ」ポートにて)(Katsumi/TOKYO STUDIO)

電動キックボードのハンドル操作部には、バックミラーやウインカー操作レバーのほか、サイズの違いにも対応するスライド式のスマートフォンホルダーや、貸出時に使用するQRコードなどが装備されています。後部にはブレーキランプにウインカー、区の名前が入ったナンバープレートやや取って付けたように固まっており、ここだけ見るとまさに「原付」です。

肉厚で丈夫な作りのステップ部にはバッテリーが埋め込まれているようで、低重心による安定走行に貢献しているように見えます。ただし、キックボード、自転車を問わず、アプリでバッテリー残量を見ると1〜25%を示す「1メモリ」となっている車体が少なからずありました。利用者は充電に関わることができない仕組みのため、充電のタイミングは運営側のスケジュールに依存します。コロナ禍が落ち着き利用者が増えてきたときには、さらにきめ細かいローテーションが求められるかも知れません。

結局…利用者には遭遇できず

電動キックボードのサービスはまだ周知されていないためか、取材中に実際に利用している人には出会えませんでした(本記事は「体験リポート」ではないため、筆者自身は乗車体験をしていないので悪しからず)。ちなみに「新宿小田急パーク」では、20歳代前後と見られる男性が小型電動アシスト自転車のロックを解除して出発していました。LUUPのポートは無人なので、例えば自転車のシェアユーザーに対して「声掛け」でキックボードの利用に誘導するといった、昔ながらの「アナログ」な展開ができないのは少々もどかしさを感じます。

とは言え、歩いていて目に入るやいなや興味深そうに実機をのぞいたり、友だち同士で記念撮影をしている人の姿は多く見られました。今はまだ少し風変わりな乗り物と捉えられているかも知れませんが、高い関心をもって迎えられているのは確かです。口コミやSNSでの評判が人々に行き渡り、電動キックボードが東京の街なかを普通に行き交うのはそう遠くはないのではと感じました。

バックミラーやスマートフォンホルダーが装備されているLUUPの電動キックボード(「新宿小田急パーク」ポートにて)(Katsumi/TOKYO STUDIO)
バックミラーやスマートフォンホルダーが装備されているLUUPの電動キックボード(「新宿小田急パーク」ポートにて)(Katsumi/TOKYO STUDIO)

ところでLuupは、4月2日(金)から大阪市内のキタ・ミナミでも小型電動アシスト自転車のシェアリングサービスを開始しています。大阪での電動キックボードの実証実験も認可されており、Luupでは2021年春から夏にかけて開始できるよう準備しているとのことです。

安全面への配慮と的確な対応が鍵

Luupは、一人乗り電動マイクロモビリティによる短距離移動手段を包括的に取り扱う中で、またいだり漕いだりする必要がなく、スカートやスーツなどの服装でも気兼ねなく乗れる電動キックボードに早くから注目していました。規制の厳しい日本における普及に向けてのルール作りや実証実験、継続したデータ収集による課題の発見を業界に率先して行い、誰にでも安全で便利な移動インフラを目指しているとのことです。Luup代表取締役の岡井大輝氏は、2023年までに全国展開することを公言しています。

公道を走るレンタル移動手段という視点では、公道を走行できるカート型自動車が、非日常を体験できる観光アクティビティとして一時期脚光を浴びました。しかし、走行ルールやマナーが守られていないケースが目立つにつれ、非難の声が高まっていったことは記憶に新しいところです。電動キックボードも公道走行する以上、事故やトラブルとまったく無縁ではいられません。

折しも新型コロナウイルス感染症の拡大により、密を避けられる新しい移動手段として小型モビリティには追い風が吹いています。関係省庁との折衝で成果を出しているLuupですが、今後発生するであろう向かい風にも、いかに真摯に対応し、共感を得られるかが電動キックボード普及への鍵になってくると思われます。

万が一を未然に防ぐ取り組みとして、電動キックボードを利用するにあたっての「安全講習会」がLuup主催で開催されます。会場は渋谷区立宮下公園1階のアディダス横スペースで、4月29日(木)〜5月5日(水・祝)のゴールデンウィーク期間中、12時〜18時の時間内に会場に行くと参加できます(無料、予約不要)。なお、緊急事態宣言の発令により開催を中止することもあるとしており、その場合は公式サイトおよびTwitterにて告知するとのことです。