京阪電気鉄道は、2021年9月25日(土)に京阪線・大津線でダイヤ変更を実施し、運転本数の見直しや最終列車の繰り上げなどを行います。
昨今の新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、京阪線の輸送人員は平日の終日で約30%減(2019年対比、以下同じ)、特に深夜時間帯では約70%の大幅な減少が記録されました。また、夜間保守作業の増加や人材不足も解決すべき課題として挙げられています。
これらの要因を踏まえ京阪電鉄は、ウィズコロナ・アフターコロナの社会を見据えた鉄道事業の構造改革を行う必要があると説明しています。9月25日(土)に実施されるダイヤ変更は、ラッシュ時間帯を含めて全日にわたり運転本数が見直され、最終列車の時刻繰り上げも行われる大規模なものとなります。
昼間は大減便 「快速急行」は助けとなるか
京阪線では、時間帯ごとに利用状況に応じた輸送力調整が行われますが、特に大きく変わるのは平日・土休日とも昼間時間帯(10時〜15時台)です(路線図は下図を参照)。
各列車種別の1時間あたりの運転本数が現行の上下各6本から変更後は4本に削減されます。具体的には、京阪本線(出町柳駅〜淀屋橋駅)を運行する「特急」および「準急」が1時間あたり各6本から4本に変更され、中之島線直通の「普通」も毎時6本から4本に減少します。また、交野線および宇治線においても運転本数は毎時6本から4本に減便となります。京阪線全体において、各列車の頻度は基本的に10分間隔から15分間隔へと広がることになります。
本数減少を補うかたちで、特急と同様に座席指定特別車両「プレミアムカー」サービスを実施する「快速急行」が新たに設定され、1時間あたり2本運転されます。快速急行の停車駅は特急停車駅に守口市駅、寝屋川市駅、香里園駅を加えたもので、京阪間の速達列車の本数は現状の1時間6本が維持されますが、平均所要時間は少々増加します。
特急車両8000系の全編成に、2列+1列のリクライニングシートを備えたプレミアムカー専用車両が1両組み入れられ、2017年8月にサービスが開始されました。ゆったりくつろげる座席だけでなく、無料Wi-Fiや全席コンセントなど車内設備も充実しており、プラス400円〜500円(距離に応じる)の料金に見合ったサービスとして好評を博しています。
ところが、昼間毎時6本の特急を8000系だけではカバーできないため、一般車両3000系も特急運用され、列車によってプレミアムカーのサービス有無が混在する状態となっていました。この問題を解決するため、3000系にも全編成にプレミアムカーが設置されることになり、2021年1月31日ダイヤ変更から昼間時間帯のすべての特急は、車種を問わずプレミアムカーサービスが提供されるようになりました。
3000系へのプレミアムカー導入拡大はコロナ禍前からの計画であり、もちろん毎時6本ダイヤを前提としたものです。昼間の特急がプレミアムカー付き車両で統一されてからつかの間、図らずも昼間の減便が不可避な事態となり、おそらく京阪は難しい選択に迫られたことでしょう。
準急や普通を毎時4本とする一方で、特急6本を堅持しようとするとパターンが合わなくなり、利用しづらいダイヤになります。しかし、仮に特急を毎時2本純減させると、せっかく増やしたプレミアムカーが明らかに余剰となり、設備投資の意味がなくなってしまいます。プレミアムカーは追加料金を収受できる京阪にとって貴重な収益源であると同時に、密を避けて乗車したい利用者への選択肢としての重要性も増しており、これを縮小させるのはありえない判断です。
京阪が出した答えは、特急に準ずる種別の快速急行を毎時2本挿入するというダイヤです。これにより毎時6本のプレミアムカーサービスは継続でき、減便により不便になる途中主要駅もある程度救済することができます。副産物として、快速急行が停車する3駅の利用者もプレミアムカーの恩恵を受けられるようになります。
基本的に減便となる今回のダイヤ変更において、快速急行は利便性低下を防ぐ緩衝材の役割を担いながら、速達性と収益性の確保というさまざまな任務も課せられています。
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