JR西日本は、ローカル線の実態と課題を沿線地域と共有して今後の議論を行うため、線区ごとの経営状況について情報開示を行いました。
今回、詳細な経営状況が示されたのは、1kmあたりの1日平均利用者数「輸送密度(平均通過人員)」が2000人/日未満の30線区です。線区にかけられた費用に対する運賃収入の割合(収支率)や、100円の収入を得るのに必要な費用(営業係数)といったデータが開示されています(対象線区の路線図と輸送密度ワーストランキングは下図を参照)。
2019年度の輸送密度が低い下位10線区中、芸備線・木次線など中国地方山間部を走るローカル線が9線区を占めています。輸送密度が最も低いのは芸備線の東城駅〜備後落合駅間の11人/日で、2017〜2019年度平均の収支率は0.4%、営業係数は25,416とされています。芸備線をめぐっては2021年6月以降、JR西日本が岡山県・広島県の沿線自治体に対して「地域公共交通計画」の策定を検討するよう働きかけを行っています。
また、輸送密度102人/日と北陸エリアで最も利用が少ない大糸線(南小谷間〜糸魚川駅間)についても、沿線の方たちと幅広く議論を行う部会が2022年3月に設置されています。そのほか、特急列車が運行している紀勢本線(きのくに線)や山陰本線、播但線、山口線の一部区間も今回の情報開示対象に含まれています。
JR西日本によると、ローカル線については輸送改善や観光PRなどで利用を促進してきたものの、沿線人口の減少や少子高齢化、道路の整備やクルマ中心のまちづくりなど、環境の変化とともに利用が大きく減少しているとのことです。クルマに比べて鉄道はきめ細かな移動ニーズに対応できないこともあり、線区によっては利用状況が厳しく、大量輸送でCO2排出量も抑えられるという鉄道の優位性が発揮できていないと現状認識しています。
今後は、地域のまちづくりや線区の特性・移動ニーズを踏まえ、地域の方と輸送サービスの確保について話し合いや検討を行いたいとしています。線路や駅などの施設を自治体が保有する「上下分離方式」による鉄道の存続や、JR西日本が開発を進めている鉄道以外のさまざまな移動手段の導入も視野に入れ、持続可能な地域交通の実現に向けて幅広く対話していきたいとコメントしています。