進化が止まらない“きのくに線サイクルトレイン” 今度は特急「くろしおサイクル」開始

JR西日本は、きのくに線の白浜駅〜新宮駅間を走行する特急「くろしお」において、自転車を分解せず車内に持ち込める新サービス「くろしおサイクル」を開始します。

特急「くろしおサイクル」利用イメージ(画像提供: JR西日本)
特急「くろしおサイクル」利用イメージ(画像提供: JR西日本)

特急列車も自転車そのまま

きのくに線では、普通電車に自転車をそのまま持ち込める「きのくに線サイクルトレイン」が2021年9月から実施されています。これまで6,000人を超える利用があり好評とのことですが、「電車の本数を増やしてほしい」「特急でも使えると嬉しい」「混んでいるときに気をつかう」といった利用者からの声もあったそうです。これらの意見を受けて考案された特急「くろしおサイクル」は、定期運行している特急列車としてはこれまでにない試みです。

特急「くろしお」の運転区間のうち白浜駅〜新宮駅間に限り、2022年10月1日(土)からは6号車がサイクリスト専用車両となります(1号車に変更の場合あり)。自転車は分解する必要はなく、改札口で貸し出される専用カバーを装着することで持込可能となります。特急車内では、前輪が上になるよう座席間のスペースに立て掛け、ゴムで座席に固定します。自転車用の2席を含む横並び4席をお一人で利用することができ、愛車が常に近くにあるので安心して乗車できます。

対象列車は1日最大6往復で、特急券は通常の特急列車と同様に1か月前から発売されます。スマートフォンの「e5489」サイトから購入できるおトクなチケットレスサービスの利用が便利です。乗車券と指定席特急券以外の追加料金は不要です。利用可能な駅は白浜駅、串本駅、紀伊勝浦駅、新宮駅の4駅で、改札口で専用カバーやゴムなどの貸出・返却を取り扱うほか、ホーム上にはカバーを着脱するスペースも設置されます(特急「くろしおサイクル」の時刻表、対象区間の路線図など詳細は下の図表を参照)。

【時刻表で解説】JR西日本 きのくに線で特急「くろしおサイクル」 サービス開始

ローカル線の救世主となるか

「くろしおサイクル」を利用できるのは、ロードバイクやマウンテンバイク、クロスバイク、折りたたみ自転車など、一人で持ち上げて座席に立て掛けられる軽量な自転車に限られます。また、長さ200cmの専用カバーに収納可能な大きさである必要があります。JR西日本和歌山支社では、「きのくに線サイクルトレイン」公式サイトを立ち上げて利用方法などの情報を提供するほか、専用カバーの付け方を動画でも紹介しています。

サービス展開にあたり、地域企業との連携も図られています。貸し出される専用自転車カバーは、織物産業が盛んな高野口地域にある原田織物(本社:和歌山県橋本市)との共同開発によるものです。また、紀州材のオーダー家具を得意とする榎本家具店(和歌山県田辺市)が専用サイクルラックの製作を担当しました。

「きのくに線サイクルトレイン」は、国土交通省から自転車の活用推進に貢献した取り組みとして評価され、2022年度の「自転車活用推進功績者表彰」を受賞しました。沿線約150kmでサイクルトレインを全曜日で本格実施し、駅設備の改良やモデルコースの設定などの数々の工夫を行い、対象区間の乗客数増加につながったことが受賞理由に挙げられています。

「くろしおサイクル」が実施される白浜駅〜新宮駅間は、「輸送密度2,000人/日未満」としてJR西日本が経営状況を情報開示する対象としている区間です。同社は「ローカル線を取り巻く状況は大変厳しいですが、これからもこのサイクルトレインを魅力あるものに育てていき、地域の活性化に貢献できるよう努めていきます」とコメントしています。