栃木県の宇都宮市と芳賀町は、芳賀・宇都宮LRTの運行を担当する宇都宮ライトレール(本社:宇都宮市)と合同で記者会見を行い、LRT「ライトライン」の開業日を2023年8月26日(土)とすることを正式に発表しました。
当面は「普通」のみの特別ダイヤ
2022年11月19日、宇都宮駅東口停留所に進入しようとした試運転中のLRT車両が脱線する事故が発生しました。その後、有識者により調査と測定試験を踏まえた考察が出され、整備主体の宇都宮市は現場となった軌道の幅や傾きを改修する工事を行いました。また、事故発生時と同じパターンである、近接したポイントと急カーブを連続走行する場合の制限速度を引き下げることも決めました。
対策工事を実施した駅東区間に加え、それ以外の曲線箇所も含めて全線で走行データの測定が行われました。その結果を受けて有識者会議は、制限速度内の適切な走行において安全上の問題はないとの最終報告書を提出しました。
安全性を確認できた市・町と運行会社の3者は、2023年6月5日(月)から全線で習熟運転を開始します。営業ダイヤに沿った単独乗務を基本とし、反復的に訓練を行いながら実際の営業運転のイメージに近づけていきます。また、国と県から運輸開始に支障がないかの検査・審査を受ける申請、運転ダイヤや上限運賃について国の認可を求める申請についても6月5日(月)の週に行います。
開業日は、これらの諸手続に要する期間を考慮するとともに、開業イベントに多くの方に参加してもらえるようにと週末に設定したそうです。当日、一般の方がライトラインに乗車できるのは、式典が終了した15:00以降になる予定です。
開業後の一定期間は、運賃収受などで時間を要することが想定されるため、所要時間は通常より数分程度長い40分台後半になると見込まれています。快速の設定を行わず、普通運行のみでピーク時は8分間隔、それ以外は12分間隔で運行する特別ダイヤが7月をめどに公表されます。運賃は初乗り150円から最大400円の対距離制で、通勤・通学定期などの各種割引制度も導入されます。
(芳賀・宇都宮LRT「ライトライン」の運行ダイヤ・運賃・路線図、開業記念イベントなど詳細は下の図表を参照)
日本初! “路面電車のない”街にLRT新設
宇都宮市の佐藤栄一市長は、芳賀・宇都宮LRTの事業に「地方創生の全国モデル都市を実現するという意思と願いを込めて」取り組んできたとしています。「世界でも類をみない、ごみ焼却施設で発電した再生可能エネルギーで走行する『ゼロ・カーボン・トランスポート』を目指す」とし、国内外から注目されている一大事業であることを強調しています。
国内の路面電車としては、1948年(昭和23年)に富山地方鉄道が高岡駅〜伏木港間(現在の万葉線の一部区間)を開業して以来で、75年ぶりの新路線となります。また、路面電車がなかった街にLRTを新設して開業するのは日本初です。
注目度や期待が最大化する「千載一遇のチャンス」と言うことで、地域と一体になった開業記念事業が始まっています。市と町は、LRT開業を祝福する地域団体や学校、民間企業などを募集します。参加すると、イベントやキャンペーン、記念商品などでPRに協力してもらえるよう、開業記念ロゴマークやライトラインの画像、ポスターなどの無償提供を受けられるメリットがあるとのことです。
市内の商業施設「ベルモール」内にある情報発信拠点「交通未来都市うつのみやオープンスクエア」には、LRTへの思いや希望を誰でも自由に寄せ書きができる「ライトラインフラッグ」が設置されました。今後、ほかの場所でのフラッグの増設や、開業に向けたイベントでの活用も予定されています。
2023年7月29日(土)には、LRTが実際に走るレールを歩ける、開業前にしかできない特別イベント「ライトラインレールウォーク」が開催されます。コースはトンネルや高架を含む往復約2kmの設定で、ライトライン車両との記念撮影もできます。宇都宮市または芳賀町に在住・勤務・通学している方を対象に参加募集が行われますが、定員の計140名よりも応募が多い場合は抽選となります。
開業当日8月26日(土)には、宇都宮駅東口停留所で開業式典や発車式が行われます。ほかにも、お祝いに来た人が楽しめるような企画を現在検討しているとのことです。