“安い・早い・球場に近い” いいことづくめ? エスコン隣接の新駅 JR北海道が計画見直し

JR北海道は、2023年3月に開業した「北海道ボールパークFビレッジ」(北海道北広島市)に隣接する千歳線の新駅計画について再検討し、工事費の圧縮、工期の圧縮に配慮した見直し計画を提示しました。

JR北海道が示した「北海道ボールパークFビレッジ」隣接地に計画している新駅の設置イメージ(画像提供:JR北海道)
JR北海道が示した「北海道ボールパークFビレッジ」隣接地に計画している新駅の設置イメージ(画像提供:JR北海道)

「エスコンフィールド」から直線上の位置に移動

ボールパークの誘致に合わせて周辺に新たなまちづくりを進めたい北広島市は、2016年(平成28年)6月に隣接地への新駅設置構想を立ち上げました。2019年12月にJR北海道が示した検討状況では、工事費は80〜90億円規模、工期は約7年となるとの回答でした。

市はこれを受け入れて2020年7月、市の費用負担による新駅設置を要請する正式な請願書をJRに提出しました。2021年9月に調査設計を市から受託したJRは周辺の測量や地質調査を行い、線路配置などを検討した結果、概算工事費は115〜125億円規模と、約4割程度増加することを市に報告しました。労務賃金や資材の高騰により、工事費が増加傾向にあることをJRは理由に上げています。

この報告に難色を示した市は2023年3月、JRに再検討を依頼しました。改めて示された工事費はおおむね85〜90億円と、最初の検討案のレベルにまで圧縮できることがわかりました。工事期間は約4年、設計や行政手続きを含めても約5年に短縮されています。

新しい計画では、新駅に備える要件や工程を見直すことにより、駅の位置が当初案よりも約200m、北広島駅側に移動しています。これにより、新球場「エスコンフィールドHOKKAIDO」の3塁側入場門「3rd BASE GATE」から直線上の位置に改札を配置することが可能になり、球場から新駅までの距離は400mから300mへと短縮されます。

(「北海道ボールパークFビレッジ」隣接の千歳線新駅の位置図、駅施設の平面図など詳細は下の図表を参照)

【図表で解説】「北海道ボールパークFビレッジ」隣接の千歳線新駅の位置図、駅施設の平面図

工事費30億圧縮、工期2年短縮の理由は?

当初は、新駅周辺の上り・下り本線を移設して両線を挟んだ中央にスペースを確保し、そこに島式ホーム1面と上り・下り待避線、引上げ線1線を新設する計画でした。乗降ホームを待避線上に設けるのは、通過列車があるときのホームの安全と、列車の乗降時間を十分に確保するためです。

見直し後の計画は、上下待避線を本線の外側に取り付け、それぞれに面した2本の相対式ホームを新設する内容です。新駅への引上げ線設置を取り止める代わりに、北広島駅に新たに渡り線を設置し、札幌駅方面への臨時列車の折り返し機能を保持します。

以上の配線計画の変更により、これまで想定していた上下本線の移設工事が不要となります。また、本線を走行する列車のために工事を一時中断することのないよう、新設する待避線とホームを本線からできる限り離れた位置に配置し、工事を継続して実施できるよう考慮されます。

新駅の改札内通路は鉄道施設、自由通路は市の施設にあたりますが、これらの構造を一体化することで橋脚などの部材の数量や、桁架設工事の回数を減らせます。さらに、敷地に支障する歩道の付け替えを市が容認したことにより、使用可能となる用地の範囲が広がり、線路脇の擁壁など「土工設備」の設置も省略できます。

30億円程度の工事費、2年程度の工期を削減できたのは、これらの見直しを行った結果であるとJRは説明しています。この計画に沿って新駅を設置することを市と合意した場合、JRは工事の着手に向けて施設の詳細設計や鉄道事業法の手続きに入ります。市は工事費資金を確保し、用地取得や、関係する都市計画変更の手続きを進めることになります。

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