大井川鐵道はゴールデンウィーク期間を含む8日間、大井川本線で電気機関車けん引による観光列車「ELかわね路号」を運転します。
「EL」は電気機関車を意味するElectric Locomotiveの略で、電気を動力とし、動力を持たない他の客車や貨車をけん引するための車両です。蒸気機関車(SL=Steam Locomotive)に代わる機関車として誕生し、かつてはELけん引による寝台列車や長距離普通列車などが全国各地で運転されていました。その後、動力車を持つ電車が普及する中で、ELは進行方向に制約があるなど効率の悪さが目立つようになり、ELけん引の客車列車は国内からほぼ消滅しました。
SL列車を後ろから押すなど脇役の仕事が多い大井川鐵道のELですが、「ELかわね路号」では先頭で主役を務めます。けん引されるレトロな旧型客車は、かつて国鉄で活躍していた全席ボックスシートの懐かしいスタイルです。エアコンが無い代わりに窓が開くので換気も万全で、さわやかな春風や製茶工場から漂うお茶の香りなど、大井川沿線ならではの雰囲気を存分に味わえます。重々しいELのモーター音や、山々に響き渡るEL特有の甲高いホイッスル汽笛も旅の気分を盛り上げます。
運転日は2021年4月24日(土)・25日(日)・29日(木)・30日(金)、5月1日(土)・2日(日)・3日(月)・4日(火)の8日間です。下りの急行「ELかわね路13号」は新金谷駅10:38発・千頭駅11:54着で途中、家山駅に停車します。上りの急行「ELかわね路14号」は千頭駅14:10発・新金谷駅15:27着で途中、川根温泉笹間渡駅・家山駅に停車します(時刻表は下図を参照)。乗車区間の運賃またはフリーきっぷに加え、EL急行料金(大人500円、小児250円)が必要です。乗車2日前までインターネットから予約が可能です。
ところで、年間を通して定期運転する旅客EL列車は、同じ大井川鐵道の井川線(南アルプスあぷとライン)に唯一現存しています。アプトいちしろ駅〜長島ダム駅間1.5kmは日本の鉄道路線で最も急な勾配をもつ区間で、台車に坂道専用の歯車が付いた専用のアプト式電気機関車がこの区間のみ客車に連結して運転されます。