南海電気鉄道は、登場から半世紀を超えてなお現役で活躍している高野線6000系車両のうち1編成について、「ステンレス無塗装」の復刻デザインに戻して2023年9月11日(月)から運行を開始します。
高野線の通勤輸送を60年以上担う
かつての高野線では、山岳区間への直通運転に対応した車体長の短い車両が通勤輸送にも用いられていました。しかし、沿線の住宅開発進展に伴って輸送力不足が深刻となり、これを改善するため、平坦区間専用として大量輸送に適した20m級4扉の車両を新造することが決まりました。その第1弾として1962年(昭和37年)に運行を開始したのが6000系です。
東急7000系、京王3000系と並び、当時の東急車輛製造(現在の総合車両製作所)が米バッド社との技術提携で開発した日本初の「オールステンレス車両」です。当初の運転区間は三日市町駅以北でしたが、その後の複線化・線形改良工事の進展により橋本駅までの運転が可能となっています。1985年(昭和60年)からは冷房装置の取り付けをはじめとする車両更新が施されました。
腐食に強く、塗装が不要で保守費用を節減できるステンレス車体のメリットを発揮し、大手私鉄では異例と言える60年以上の長寿命を実現しています。当時の南海の設計思想により採用された幅の大きな片開き式のドアも健在で、特急用を除く現存の同社車両では唯一の存在です。2019年(令和元年)からは置き換えのため廃車が始まっており、譲渡先の大井川鐵道で再出発を切った編成もあります。
(南海6000系車両の現在のデザイン、復刻デザイン車両の運行、車両撮影会の募集内容など詳細は下の図表を参照)
「復活」熱望するファンの声に応えて
片開きドアとともにこの車両のアイコンとなっていたのは、ステンレス地の「銀色」を活かした無塗装の姿です。存在感のある波打つコルゲート外板や、丸みを帯びた前面形状も特徴的で、ステンレス車両が珍しかった関西の鉄道の中で異彩を放っていました。
この原型デザインは1990年代まで見ることができましたが、関西国際空港の開港を見据えたCI(コーポレート・アイデンティティ)策定と連動し、車両イメージの統一化という転機を迎えます。6000系も全編成が順次、青とオレンジのカラー帯に「NANKAI」ロゴを配したデザインに変更され、オリジナルの姿から遠ざかってすでに年月が経過しました。
南海によると、利用者から「ステンレス無塗装を復活させてほしい」との要望が多く寄せられていると言い、この声に応えるかたちで懐かしいデザインがよみがえります。ステンレス無塗装化されるのは「6001編成」「6028編成」をつなげた6両編成1本です。難波駅から橋本駅までと、泉北高速鉄道の和泉中央駅までの各区間で9月11日(月)から当分の間、定期列車として運行されます。
南海テレホンセンター(06-6643-1005)では、この復刻デザイン車両の運行ダイヤを知りたい方のため、3日後までの運用情報の事前問い合わせに対応します。回答できるのは12月10日(日)分までとしていますが、12月11日(月)以降も当面の間運行を続けるとのことです。
一般運行に先駆け、鉄道ファン向けのお披露目イベント「6000系復活デザイン車両撮影会」が9月9日(土)に開催されます。同社千代田工場(大阪府河内長野市)内で10:00からと14:00からの2回行われ、参加費は中学生以上6,000円、小学生3,000円です。幼児の参加や小学生のみの参加はできないとのことです。
参加は「ぶらりたび」Webサイトから先着順での受付となり、募集開始は8月8日(火)10:00開始です。各回100名、合計200名の定員に達し次第、募集終了となり、キャンセル待ちの扱いは行われません。