南海電気鉄道は、2014年7月にグループ化し現在は完全子会社である泉北高速鉄道について、2025年度早期をめどに経営統合することを取締役会で決議したと発表しました。
もとは大阪府の三セク 現在は南海の完全子会社
2023年12月20日(水)に開いた両社の取締役会で、南海を存続会社、泉北高速を消滅会社とする吸収合併を前提に検討することで基本合意に至りました。今後は吸収合併の契約内容について協議や検討を進め、2025年早期の経営統合に向けて最終合意の決議を目指します。
泉北高速の前身は、戦後の大阪の急激な都市化に伴う諸問題を解決するため、官民が共同出資して1965年(昭和40年)に設立した第三セクター「大阪府都市開発(OTK)」です。東大阪市と茨木市に整備したトラックターミナルなどの物流施設を運営する事業で創業し、1971年(昭和46年)5月には泉北ニュータウンの足となる鉄道事業が加わりました。
中百舌鳥駅〜泉ケ丘駅間の開業当初から南海高野線との相互直通運転が行われており、郊外のニュータウンから大阪都心までを乗り換えなしで結んでいます。沿線の住宅開発と連動し、路線は1973年(昭和48年)12月に栂・美木多駅、1977年(昭和52年)8月に光明池駅、1995年(平成7年)4月には和泉中央駅まで段階的に延伸してきました。
転機が訪れたのは、大阪府による関連事業の見直しです。当時の橋下徹知事の「民間でできるものは民間に委ねる」という基本方針のもと、OTKは完全民営化されることになり、2013年(平成25年)6月に行われた公募には南海も手を上げました。しかしながら、最高価格を提案した米国の投資ファンド、ローン・スター社が優先交渉権を獲得し、いったんは売却先に選ばれました。
(南海電鉄と泉北高速鉄道の基本情報、泉北高速の路線図と沿革、経営統合後の運賃案など詳細は下の図表を参照)
人口減や労働力不足で効率化は待ったなし
この公募結果について、安全輸送や利便性につながらないとして沿線の堺市や和泉市が異を唱え、府議会で反対多数により否決されました。後任の松井一郎知事は結局、大幅な運賃値下げによる利便性向上策を提案していた南海を相手に随意契約を結ぶ方針を示しました。府などが保有していたOTKの全株式は2014年(平成26年)7月に南海グループに譲渡され、社名も泉北高速鉄道に改められました。
グループ化以降の泉北高速は、連絡運賃の値下げや座席指定特急の運転開始、駅ナカビジネスの拡充などにより利便性を高める施策を実行してきました。シナジー効果をさらに発揮させるため、複数のグループ会社が保有していた泉北高速の株式を集約し、2022年4月からは南海の完全子会社となっています。
一方でその間も沿線人口は減少を続け、コロナ禍を通じた生活様式の変化もあり「鉄道事業の構造的な需要減は歯止めがかからない状況」としています。また、将来にわたって事業を担う人材の確保も困難になることは確実で、鉄道と不動産賃貸という共通の事業を営む両社を経営統合し、グループ経営の効率改善を通して持続可能な体制をつくることが最重要であると判断されました。
南海は、経営統合を通して堺・泉北エリアの価値をさらに高め、子育て世代を中心とした人口流入を促したい考えです。現在、南海との連絡区間を利用する場合の通勤定期を約2割、通学定期は約4割値下げする運賃案を作成中とのことで、初乗り運賃の二重払い解消など、地域からのこれまでの声に応えるべく検討を進めるとしています。
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