近畿日本鉄道(近鉄)は、2023年4月1日(土)から平均17.0%値上げとなる運賃改定を行う旨を国土交通大臣に申請しました。
近鉄の運賃改定は消費税率引き上げに伴うものを除いて1995年9月以来、約27年ぶりとなります。普通運賃・定期運賃を含めた平均改定率は17.0%で、普通運賃は乗車キロ数に応じて現行から20〜580円値上げされます。3kmまでの初乗り運賃は現行の160円から180円に改定されます(普通運賃の改定前後比較は下表を参照)。日常的に利用が多い10kmまでの短距離区間については普通運賃が改定率より低い値上げ幅に抑えられ、利用者負担の軽減が図られます。併せて、通学定期についても家計への負担軽減のため、改定率は通勤定期の約半分に抑えられています。改定後の通学定期は割引率82.5%で、これは大手私鉄で最も高い率になるとのことです。
なお、一部区間(吉野線・湯の山線・鳥羽線・志摩線・けいはんな線)に対する加算運賃の額、鋼索線(ケーブルカー)の運賃および特急料金についての改定は行われません。
近鉄によると、沿線の少子高齢化などにより利用者が減少している中、新型コロナウイルス感染症の流行により利用はさらに大きく落ち込み、非常に厳しい事業環境に陥っているとのことです。テレワークやWeb会議、買い物のオンライン化など「新しい生活様式」はコロナ禍の長期化ですでに定着し、人件費や設備投資の抑制など「不断の経営努力をもってしても、これらによる収入減少を補うことは困難」としています。
一方で、安全性・利便性確保のために2023年度から3年間で約860億円の設備投資が計画されています。近鉄が保有する一般車両(特急車両以外)の約3割にあたる約450両が昭和40年代に製造され、車齢55年超と老朽化が進んでいることから2024年度以降、必要な数の新型車両に順次置き換えるとしています。ほかにも車内防犯対策の強化、激甚化する自然災害への対策、可動式ホーム柵設置などバリアフリー整備の加速、駅のリニューアルなどの利用環境整備に加え、列車の自動運転化など将来に向けた技術開発も推進していくとのことです。
近鉄は、今後の健全な鉄道運営維持のため、どうしても不足する費用の一部を負担してもらいたいと改定理由を説明し、利用者に理解を求めています。