南海電気鉄道などグループの交通事業者4社は、約1年9か月にわたり実証実験を行ってきた「Visaのタッチ決済」による交通利用サービスを今後も継続して提供します。
インバウンド対応の切り札
南海のほか泉北高速鉄道、南海りんかんバス(本社:和歌山県橋本市)および南海フェリー(本社:和歌山市)で引き続き、Visaのタッチ決済機能のあるクレジットカードによる乗車・乗船サービスを利用できます。
改札機にクレジットカードをタッチすることで運賃を支払える乗車システムは、三井住友カード(本社:東京都江東区)、QUADRAC(本社:東京都港区)、ビザ・ワールドワイド・ジャパン(本社:東京都千代田区)との協働により構築しました。タッチ決済に対応した改札機は2021年4月3日から主要駅に設置され、利便性の確保など運用面での検証が行われました。併せて、クラウドシステムのメリットを活かし、運賃割引キャンペーンといった柔軟なサービスも試験的に提供されました。
また、タッチ決済の導入はグループ会社へ横展開されました。2021年10月から南海りんかんバスで乗車区間に応じた運賃収受を開始し、2022年3月から南海フェリーで鉄道との乗り継ぎ利用に対する運賃割引の実証実験を行いました。続けて2022年4月からは、南海と相互乗り入れを行う泉北高速鉄道との間で、鉄道事業者間の乗継割引を適用した運賃収受が実現しています。
新型コロナウイルス感染症拡大を受けた検証不足が影響し、実証実験は当初予定より1年間延長されました。南海によると、検証によって得られた成果と知見を通じ、利用者にサービスを提供できるレベルであることが確認できたとしています。このため、2022年12月11日(日)で実証実験期間を終了し、12日(月)以降は正式運用としてサービスを継続します。
関西国際空港からのアクセスを担っている南海グループは、インバウンド旅客の移動を円滑化するため、駅の改札でのタッチ決済による入出場に国内で初めて対応しました。タッチ決済による交通利用サービスは、特に海外で対応エリアが拡大を続けています。2022年10月からの水際制限緩和に伴い増加が予想されるインバウンド客の受け入れ体制を強化していくため、利用可能エリアを順次拡大し、2025年大阪・関西万博に備えるとしています。また、現在の対象カードはVisaブランドに限定されていますが、今後はその他の国際カードブランドにも対応していく予定とのことです(Visaのタッチ決済利用可能駅の路線図など詳細は下の図表を参照)。
バスやフェリーもタッチでOK
各社の具体的な取り組みとして、南海は現在は23駅にとどまるタッチ決済の利用可能駅を2023年度から順次拡大し、全駅で利用できるようにすることを目指します。また、これまで展開してきたQRコードを用いた企画乗車券「南海デジタルきっぷ」についても、より便利に利用できる乗車券を企画したり、ターゲットを絞った広告宣伝、インバウンド対応のための多言語化などを図っていくとしています。
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泉北高速ではこれまで有人窓口でタッチ決済を処理していましたが、利便性向上のため、「タッチ決済」「QR乗車券」「交通系ICカード」の3つの乗車券類に対応した日本初の一体型改札機を導入します。既存のIC専用改札機にタッチ決済用とQRコード用の2つのリーダーを増設したもので、2022年12月12日(月)始発時から全5駅で稼働が開始しています。
世界遺産・高野山で路線バスを運行する南海りんかんバスは、タッチ決済の収受額に1日あたりの上限を設定します。上限額は、紙媒体で発売している「1日フリー乗車券」の発売額と同額で、発売窓口で事前にチケットを購入する手間が省けます。同社でのサービス開始時期は改めて告知するとしています。
航路として国内で初めてタッチ決済に対応した和歌山港〜徳島港間の南海フェリーは、フェリーと南海電車を乗り継ぎ利用すると割引運賃を適用する「スマート好きっぷ」の普及に努めます。金額はフェリーの乗船運賃と同額の2,200円(大人)で、タッチ決済に対応した南海の駅発着なら乗車区間を問わず一律価格となるおトクなサービスです。