車両新造なし 軸は不動産 小田急の設備投資計画 特急対応ホームドア設置 橋上駅舎化も

小田急電鉄は2023年度に鉄道事業で総額261億円の設備投資を行い、通勤車両のリニューアルや駅舎改良工事を実施するほか、ホームドアや車内防犯カメラの設置などにより安全対策を強化します。

2022年度に小田急線本厚木駅に設置された大開口ホームドア(画像提供:小田急電鉄)
2022年度に小田急線本厚木駅に設置された大開口ホームドア(画像提供:小田急電鉄)

「3000形」利用しやすくリニューアル

小田急は「鉄道駅バリアフリー料金制度」に基づき、2023年3月18日(土)から普通運賃に10円を加算するバリアフリー料金の収受を開始しています。すべての利用者に安全に利用してもらうための整備費として活用できるもので、これを原資に、ホームからの転落や列車との接触事故を未然に防止できるホームドアの設置を急ぎます。

2023年度は町田駅全ホームと本厚木駅3・4番ホームにホームドアを設置し、本厚木駅には既設のものと合わせて全ホームに完備されます。両駅は特急停車駅であることから、通勤車両とは異なる特急車両のドア位置にも対応できる大開口のホームドアが採用されます。また、豪徳寺駅、千歳船橋駅、喜多見駅などでホームドア設置に向けた準備の着手が行われます。

今後もバリアフリー料金制度を活用し、2032年度までに全37駅(新宿駅〜本厚木駅間の全駅と中央林間駅、大和駅、藤沢駅)へのホームドア設置が進められます。

犯罪の抑止や事件の早期解決を図るため、車内への防犯カメラ設置も進められます。2025年度の設置工事完了を目指しており、今年度は通勤車両16編成、特急車両4編成を対象に工事が行われます。安全面ではそのほか、町田駅〜相模大野駅間、相模大野駅〜東林間駅間で橋梁の耐震補強工事を行うなど、大規模な地震に備えた対策も進められます。

サービス向上策としては、通勤車両「3000形」のうち6両・3編成のリニューアルが実施され、「車いす・ベビーカースペース」が全車両に各1箇所設けられます。また、環境配慮の観点から、省エネルギーが図れる制御装置の搭載、オイルフリーコンプレッサーへの更新なども行われます。

中央林間駅では継続的に駅舎改良工事が実施されており、東口改札口の新設やトイレの改修などが完了しています。今年度はホーム改良工事が行われ、2024年度を目標にすべての工事が完了する見込みです。また、鶴川駅と藤沢駅は自由通路を兼ねた橋上駅舎に改良する計画があり、関係自治体と実施に向けた協定を締結した後、工事に着手する予定としています(小田急電鉄2023年度鉄道事業設備投資計画の主な内容、ホームドア設置状況など詳細は下の図表を参照)。

【路線図で解説】小田急電鉄2023年度鉄道事業設備投資計画の主な内容、ホームドア設置状況

「収益の第一の柱」は鉄道にあらず

小田急の鉄道事業における設備投資の推移を見ると、新型コロナウイルス感染症流行前の2019年度までは年300億円程度が投じられていました。2020年度以降は年250〜260億円規模に抑えられており、2023年度の計画も同水準です。2019年度から新型通勤車両「5000形」が継続的に増備されていましたが、今年度の製造予定はありません。

小田急は、テレワークをはじめとする新たな生活様式が恒久化したことにより、2023年度の鉄道輸送人員は2018年度比で約12%のマイナスにとどまるとの見通しを立てています。コロナの影響長期化を受け経営状況が悪化しており、グループのシティホテル「ハイアット リージェンシー 東京」を売却するなど財務の健全化を急いでいます。

中期経営計画によると、交通領域では効率化を進め、突発的な利用者減少などのリスクにも耐えられるよう、少人数で運営できる体制をつくります。箱根登山鉄道の小田原駅〜箱根湯本駅間では、2025年度にワンマン運転の試験運用を開始することを検討しています。

一方、東京メトロ、東急不動産(本社:東京都渋谷区)と共同で進める新宿駅西口地区開発計画をはじめ、沿線の町田エリアや新百合ヶ丘エリアでもまちづくり構想が控えています。中期経営計画では不動産領域を収益の第一の柱と位置付けており、今後は経営資源を重点的に配分し、利益規模を拡大していくことを明確にしています。

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