京福電気鉄道は、バリアフリーに対応し省エネルギー性能も優れた新型車両「KYOTRAM(きょうとらむ)」計7両を2024年度から順次導入し、老朽化が著しい既存車両を置き換えていきます。
車齢50年以上の旧型車両は引退へ
嵐電に在籍している電動客車27両のうち「モボ101形」(6両)と「301形」(1両)は車体製造から50年、電動機などは製造から90年以上が経過しています。故障頻度が高く部品調達が困難、バリアフリーに未対応といった問題を解決するため、16億8千万円の設備投資を行って新型車両による置き替えを始めます。
KYOTRAMは2024年度に最初の1両が営業運転を開始し、2025年度から2028年度にかけて残りの6両が順次投入される予定です。嵐電の新型車両は2001年(平成13年)に営業運転を開始したモボ2001形以来で、23年ぶりの登場となります。
“嵐電が走る街並み”がより魅力的な風景となるようなデザインを目指したとのことで、嵐電のイメージカラーである「京紫色」をまとった大きな窓の車体が特徴的です。シンプルな造形の中でも印象的な車体前面の曲線フォルムは、古くからの“路面電車”や嵐電の旧型車両がオマージュされています。
デザインを担当したのはGKデザイン総研広島(本社:広島市)です。京福を含む京阪グループとの結びつきが強く、比叡山・琵琶湖エリアで運行するケーブルカーやロープウェイなどの車両デザイン統一、京阪電気鉄道の車両や駅サインシステムなど全体のリブランディングなども手がけています。
(嵐電の新型車両「KYOTRAM」のデザイン、モボ2001形貸切電車の参加募集など詳細は下の図表を参照)
回生ブレーキを体験できる貸切電車も
愛称のKYOTRAMには、京都を走る「人と地球にやさしい」路面電車という意味が込められています。風景に配慮したデザインだけでなく、安心で快適な車内空間、環境負荷の低減も実現しています。
車内設備はバリアフリー化され、多言語による案内にも対応します。パナソニックが開発した微粒子イオン「ナノイーX」発生装置を搭載するほか、シートのバケット化、吊り革や手すりの改良など、細部にまで安全性と快適性の向上が図られます。
KYOTRAMの走行機器にはVVVFインバーター制御と回生ブレーキが導入され、1両あたりの消費電力量は現行の抵抗制御車両に比べて約半分に削減できる見込みです。回生ブレーキとは、電車がブレーキをかけたときにモーターを発電機として動かし、発生した電力を架線に戻す電気式ブレーキのことです。そのエネルギーはほかの電車が有効活用し、路線全体でCO2排出量低減に貢献できます。
なお、既存のVVVF車両である2001形2両には改造工事が実施されており、嵐電で初めてとなる回生ブレーキを搭載して6月下旬から通常ダイヤでの運転を開始する予定です。加えて、今年度中に回生電力貯蔵装置の新設が行われ、発電した電気を100%活用できる効率的な仕組みが整備されます。
ちなみに、回生ブレーキ化された営業運転前の2001・2002号車を連結して貸切電車とし、特別なルートを走行するイベントが2023年6月17日(土)に開催されます。回生ブレーキシステムの紹介や使用有無の体験、写真撮影会も用意するとのことで、参加代金はお一人4000円です。事前の参加申込は6月5日(月)8:00開始で、専用の申込サイトから定員40名まで受け付けられます。