JR東日本は、2023年度から「センターサーバー方式」を採用した新しいSuica改札システムを導入し、処理スピードの向上や多様化するニーズへの対応を実現する「新しいSuicaサービス」への革新を目指します。
「センターサーバー方式」北東北から導入開始
交通系ICカード「Suica」を使って鉄道を利用する際、現在はタッチした改札機の内部で運賃計算などの処理が行われます。サービスを開始した2001年から長年続けてきた基本設計ですが、新システムでは構成を大きく転換し、運賃計算など処理はすべてクラウド上に設置したサーバー側で実施するようになります。計算処理から解放された改札機は、タッチされたSuicaと、ネットワーク通信でつながるサーバーとを中継する役割に徹します。
サーバーと通信ネットワークは、首都圏の鉄道利用に求められる高速な処理に対応し、現行の改札機と比べて複雑な計算処理も可能となります。サーバー台数の変更や、他のサーバーシステムとの連携にも対応した拡張性を備えており、将来の機能向上などの改修作業が簡素化されるのでコストダウンにもつながります。
新システムに対応した自動改札機は、2023年5月27日(土)からSuica出改札サービスを新たに開始する北東北3エリア(青森・盛岡・秋田エリア)の45駅にまず導入されます。その後、夏以降から首都圏・仙台・新潟の各エリアの改札機についても順次更新されます。なお、新システムに対応した改札機においてもSuicaの利用方法は変わりません(「センターサーバー方式」を導入したSuica改札システムの概要、Suicaサービスの将来像など詳細は下の図表を参照)。
弱点を克服した「新しいSuicaサービス」
JR東日本は、この新しい改札システムに加え、サーバー上でチケット情報を管理する「鉄道チケットシステム」の導入を目指しています。ICカードにデータを記録するこれまでのSuicaの仕組みでは記憶容量に限界がありましたが、サーバーを基盤としてプラットフォームを整備することによりこの課題が解消します。また、Webやスマートフォンとの親和性も高まり、多様なニーズに対応した「新しいSuicaサービス」の提供が可能になるとしています。
現在の改札機にはシステム上の制約があり、運賃計算は各Suicaエリア内の相互間の利用にしか対応していません。例えば、首都圏エリアの西那須野駅から仙台エリアの仙台駅までといった、異なるエリア間にまたがってのSuica利用はできません。新改札システムの導入が完了すると、サーバーが東日本エリアとして広範囲の運賃処理を行えるようになり、分断されているSuicaエリアの統合が実現する予定です。
将来、鉄道チケットシステムが導入されると、時間帯や曜日などの利用条件があるクーポンを事前購入し、IC乗車運賃から自動的に割り引きを適用するサービスが提供可能となります。商業施設やイベントなどと連携した運賃割引クーポンなど、生活サービスと移動を融合した商品への横展開も想定されています。
現在、Suicaの利用に応じてポイントを還元するサービスは展開されていますが、運賃を直接割り引く仕組みには対応していません。移動とサービスの業態をまたがる柔軟な商品設定が可能となることで、JR東日本がグループ全体で目指している「Suicaの共通基盤化」がいよいよ実現します。
また、鉄道チケットシステムは、各地域で展開しているMaaS(Mobility as a Service)との連携も視野に入っています。Suicaと紐づいたMaaSチケットをWebで購入すると、新幹線や特急による都市間移動に加え、目的地での交通や観光などもSuicaのタッチでシームレスに利用できるようになります。
これらの「新しいSuicaサービス」の内容や開始時期は、詳細が決まり次第、発表していくとのことです。