川根温泉まで復旧 観光強化で「ナイトSL」登場 大井川鐵道ダイヤ改正 普通電車は半減

大井川鐵道は、2022年9月の台風15号の影響で被害を受けて不通となっている大井川本線の家山駅〜千頭駅間のうち、家山駅〜川根温泉笹間渡駅間の運転を2023年10月1日(日)に再開します。

大井川第一橋梁を走行する大井川鐵道の蒸気機関車C11形190号機と旧型客車(画像提供:大井川鐵道)
大井川第一橋梁を走行する大井川鐵道の蒸気機関車C11形190号機と旧型客車(画像提供:大井川鐵道)

朝と夜に増発で「SL・EL急行」4往復に

復旧するのは、茶畑の風景が広がる抜里(ぬくり)駅や、撮影名所として知られる「大井川第一橋梁」を含む区間です。大井川本線の列車が大井川の本流を渡るのは約1年ぶりで、同社が運営する「川根温泉ホテル」へのアクセスも改善します。同日に行われるダイヤ改正は、SL(蒸気機関車)やEL(電気機関車)が旧型客車をけん引する観光列車の拡充が中心となります。

新金谷駅〜家山駅間に2往復設定される「SL・EL急行 かわね路号」のうち、下り2本・上り1本の列車が川根温泉笹間渡駅まで運転区間を延長します。さらに、早めの時間帯から奥大井の観光を楽しめるよう、新金谷駅9:30発の観光列車「SL急行 南アルプス号」が新設されます。また、一部の日程では夕方から夜にかけ、夜行列車の雰囲気を楽しめる観光列車「ナイトSL(仮称)」が運行されます。

大井川鐵道は、「昔ながらのSL・ELにレトロな客車など、当社でしか味わえない『古き良き日本の鉄道』の雰囲気を存分に楽しんでほしい」と、最大4往復に増発する観光列車の集客力に期待をかけます。

観光強化の取り組みとして、奥大井湖上駅や接阻峡温泉など紅葉シーズンの井川線(南アルプスあぷとライン)沿線をスムーズに楽しめるよう、完全予約制の旅行商品が新たに企画されます。新金谷駅〜家山駅間の往路は「SL急行 南アルプス1号」、復路は「SL急行 かわね路4号」の利用で、そのほか、専用観光バスや井川線の乗車券が行程に含まれます。販売価格は現在調整中とのことです。

(2023年10月1日ダイヤ改正後の大井川本線と川根本町コミュニティバスの運転時刻など詳細は下の図表を参照)

【時刻表で解説】2023年10月1日ダイヤ改正後の大井川本線と川根本町コミュニティバスの運転時刻

不通区間の代行は「コミュニティバス」へ移管

SL・EL以外では、電車車両を使用した特別料金不要の速達列車「快速急行」「区間急行」が大井川本線に新設されます。上下各1本の快速急行は毎週金曜日を中心に不定期で運転する列車で、往路のSL乗車との組み合わせや、奥大井方面からのお帰りに便利です。上り1本のみの区間急行は毎日運転で、川根温泉での日帰り入浴や夕食を楽しんだ後に利用できるよう遅めの時間帯に設定されます。

一方で、大井川鐵道と沿線自治体の静岡県島田市、川根本町との協議の結果、地域輸送を担う普通電車の大幅な減便が決まりました。金谷駅〜新金谷駅間の区間運転を除いた本数は、現行の10往復(土休日は9往復)に対して改正後は4往復と半数以下になり、最終列車も1時間以上繰り上がります。なお、定期券をお持ちの方がSL・EL急行に乗車する際、急行料金を不要とする取り扱いが実施されます。

井川線の列車本数は1日5往復の現行通りですが、運転時刻が全体的に変更となります。

台風被害後の大井川鐵道の経営状況は厳しく、家山駅〜千頭駅間で運行している代行バスは4月以降、運行経費の全額が川根本町の財政支援により賄われています。ダイヤ改正前日の9月30日(土)をもって同社は運行から撤退し、1日6往復のバスは川根本町が運営するコミュニティバスへ移管されます。同社グループ会社の大鉄アドバンス(本社:静岡県島田市)は、町から受託して運行を続けます。

体制変更により、鉄道運賃に準じていた代行バスの運賃体系も変わります。これに伴い、大井川鐵道の企画乗車券のうち「大井川本線フリーきっぷ」「大井川周遊きっぷ(2日・3日間用)」の発売が終了します。奥大井方面へ観光で出かける際は、発売を継続する「井川寸又峡周遊きっぷ」を大井川本線の列車・代行バスと組み合わせるか、前述の新たな旅行商品を利用するよう呼びかけられます。

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