大阪万博に向け「弁天町駅」の乗り換え改良へ 新大阪〜うめきた〜桜島間に臨時列車も

JR西日本とOsaka Metro(大阪メトロ)は、2025年に開催される「大阪・関西万博」の会場アクセスにおいて、主要な乗換拠点となる弁天町駅の改良工事に着手します。

JR弁天町駅の新駅舎と、Osaka Metro弁天町駅東口につながる連絡通路(左)の完成イメージ(画像提供:JR西日本)
JR弁天町駅の新駅舎と、Osaka Metro弁天町駅東口につながる連絡通路(左)の完成イメージ(画像提供:JR西日本)

中央線改札へ「段差なし」の連絡通路

大阪メトロ中央線は、万博会場となる大阪市臨海部の人工島「夢洲(ゆめしま)」まで2024年度中に延伸開業し、会場へ直接乗り入れる唯一の鉄道アクセスルートとなります。大阪メトロは約485億円を投じて中央線に新型車両の増備などを行い、1時間あたりの最大運転本数を16本から24本に増やし、ピーク運行時間を拡大することで輸送力を増強します。2025年日本国際博覧会協会(万博協会)がまとめた来場者輸送のアクションプランでは、来場者の55%にあたる1日約12万6千人が中央線を利用すると見込んでいます。

中央線とJR大阪環状線の結束駅である弁天町駅では、多くの利用客が予想されることから、乗り換えをスムーズにするための改良工事が2025年春の完成を目標として始まります。

大阪環状線の内回りホームから中央線へ乗り換える際は現在、3階ホームから階段等で2階のJR改札口に降り、さらに階段等を上って大阪メトロ東口改札階へ到達する経路を利用します。今回、JR西日本と大阪メトロとの共同事業として、内回りホームから大阪メトロ改札階までを段差なくフラットに乗り換えできる「連絡通路」が新たに整備されます。連絡通路と接続する改札「内回りホーム口(仮称)」も新設され、これまで乗り換え時に必要だった2度の上下移動が不要となります。また、大阪メトロも東改札口から夢洲方面の上り線ホームにアクセスできる階段を増設し、乗り換え混雑の緩和を図ります。

JR西日本は並行して、大阪環状線の内・外回りホームにホーム柵を整備し、乗換時の安全性向上を図ります。加えて、既存の南北改札口の間に位置する場所に新たな駅舎を整備し、「新南口」「新北口」(いずれも仮称)の2つの改札口を駅舎内に設置します。新駅舎にはエレベーター2基、エスカレーター4基の昇降設備のほか、バリアフリートイレ2か所も設置され、既存施設の老朽化やバリアフリー面での課題解消も実現します。

万博開催期間中、JR改札口は既存の南北改札と合わせて5か所に増えます。連絡通路や新駅舎に加え、近隣施設「大阪ベイタワー」内の歩行者通路を介してメトロ西口改札に通じる移動導線も活用され、円滑な乗り換え誘導が行われる予定です。なお、万博終了後は大阪環状線の改札機能が新駅舎に集約され、既存の南北改札口は閉鎖される予定です(弁天町駅の改良イメージ、万博アクセスルート路線図など詳細は下の図表を参照)。

【路線図で解説】JR西日本とOsaka Metro 大阪・関西万博アクセス向上のため弁天町駅を改良

もう一つの主要ルート「JRゆめ咲線」

総額約100億円の事業費で万博アクセス輸送の向上に取り組むJR西日本は、JRゆめ咲線(桜島線)ルートの整備にも着手します。万博協会はアクションプランで、JRゆめ咲線が中央線に次ぐ来場主要ルートになると想定しています。会場までは桜島駅でシャトルバスに乗り継ぐ必要がありますが、輸送量が大きい8両編成の鉄道である利点を活かし、ピーク日には約1万6千人がこのルートを利用すると見込んでいます。万博期間中は列車が増発され、1時間あたりの運転本数をこれまでの9本から最大12本に増やすことで輸送力が確保されます。さらに、新幹線利用者の利便性向上のため、新大阪駅から東海道支線を通り、2023年春に開業予定のうめきた(大阪)駅を経由して桜島駅に直通する臨時列車も設定されます。

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桜島駅からのシャトルバス輸送では、系列の西日本ジェイアールバス(本社:大阪市)と連携し、関西バス事業者の協力も得ながら1時間あたり最大91便を運行、4,000人規模のアクセスに対応するとしています。桜島駅では万博期間限定で改札が増設され、乗り換えの安全性と利便性が向上します。また、大阪環状線とJRゆめ咲線の乗換駅である西九条駅では、万博開業までにすべての乗り場にホーム柵が整備されます。

大阪・関西万博は持続可能な開発目標(SDGs)への貢献を目的の一つとしており、JR西日本も脱炭素につながる環境への取り組みを推進します。JRゆめ咲線の列車と駅には、直通臨時列車を含めて再生可能エネルギー由来の電力が活用され、使用電力に相当するCO2排出が実質ゼロとなる「カーボンニュートラル線区」に位置付けられます。特定の路線全体のカーボンニュートラル化はJR西日本管内で初めての取り組みで、万博開催に先立って2022年下期から開始します。さらに、桜島駅からのシャトルバスにEVバスなど環境配慮型の車両を投入し、JRゆめ咲線による万博アクセスルート全体を「ゆめ咲グリーンルート」として運行することを目指しているとのことです。